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最終更新日:2024年03月28日
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第479話「悪いのは?」

日曜日、ゆっくり寝ていようと思ったが、父と祖父の声に妨げられた。
時計を見ると、もう少し寝ていたいところだが・・・。
それにしても、よくケンカをする親子である。母が居れば一喝で静かになるのだが、その母も何処かへ出かけている様だ。
服を着て下へ降りて行くと、久し振りの快晴で、居間のベランダが大きく開いていた。外には祖父が居て、居間の父とベランダ越しに何やら言い合
いをしている。
下手に加わると火に油を注ぐ結果になりかねない。
僕は素知らぬ顔でテーブルの上にあった朝刊を捲った。
「お前のだって知らんかったんだって」祖父が雑巾を片手に大声を上げていた。
「俺が毎朝使ってるの知らないはずないだろ」と父も負けずに大声を出す。
「いいだろう、こんなボロ」
「人の物を勝手に使えなくしておいて、何開き直ってんだ」と猛剣幕の父。
「ちっちゃい男だな」
「そのタオルはな、俺の顔にちょうど馴染んで使いやすかったんだ。お肌にもフィットして、そんじょそこらのタオルと一緒にすんな」
「な~にがお肌だ。鬼瓦みたいな面しくさって。おろし金で擦ったってびくともせん肌してるくせに」
口に含んだコーヒーを思わず吹き出しそうになる僕。
ケンカの原因は、祖父が父のお気に入りのタオルを勝手に雑巾にしてしまった事が発端の様だ。洗面所の横に掛けてある父のタオルを見た事がある
が、かなりくたびれていたのは確かだ。
「何騒いでるの!外まで聞こえるよ」母が戻ってケンカは打ち止めになった。
怒りの矛先を見失った父は、ふて腐れた顔で外へと出て行った。
「全く、タオルぐらい何だってんだ。お前もあんなちっちゃい男になるなよ」
「爺ちゃんも勝手に人の物使ったらダメだよ」と言う僕の言葉が聞こえたのか聞こえないのか、祖父は松の木を見ながら言った。
「カイガラムシが付いてな」と言って、歯ブラシで松の枝を擦り始めた。
それを見て僕は思わず叫んだ。
「あ~っ!俺の歯ブラシ」

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