恵理は私の友達の中でも一番の美人で、街を歩いていると、殆どの男達が振り返る。
「何処かにイケメンのお金持ちはいないかな」それが彼女の口癖だった。
ある日、そんな彼女と食事をする事になった。相変わらずの美人であったが、更に磨きが掛った様に思えた。
「私、結婚する」席に着くなり彼女が言った。
「えっ？どうしたの？いきなり」おめでとうと言うより先に、驚きの言葉が出た。
「私もこの辺で決心しようと思ってさ」彼女はそう言ってバッグから一枚の写真を取り出すと、私に見せた。
そこには、頭が禿げ上がり、でっぷりとした体格の男性が写っていて、イケメンにはほど遠い外見だった。
「いくつなの？この人」
「四十八歳」
「二十歳も違うじゃないの。なに？お金持ちなの？」
「お金なんか無いよ。ただの平サラリーマン」彼女は笑いながら言った。
「なんでこの人なのよ」
「好きだからに決まってるじゃないの」
何日かして、友達の美樹から電話が来た。
「ちょっと聞いた？恵理の結婚相手って、凄い資産家だって。父親しか居ない上に一人っ子で、父親は末期癌だって。上手い事やったよね。さすが恵理だよね。ただじゃ転ばないもの」
そんな美樹に私は言った。「よく人の事言えるよね。あんただって十八歳年上の開業医と結婚したくせに」