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最終更新日:2024年04月19日
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第480話「悟り世代」

珍しく酒の席でAが愚痴をこぼした。
「昔は俺らもさ、今時の若い者は、って言われたからさ、そういう事は言わないよ。でもさ、寂しいって言うかさ、親近感がないっていうかさ」Aの気持ちを察して僕が言った。
「今の子の事を、悟り世代って言うらしいよ。世の中のすべてを悟り切ったかの様な現実主義者って事らしい。欲もなくて人間関係にもあまり深入りしないし、恋愛にも淡泊で無駄な事は一切しない。目立つ事も苦手なんだってさ」
「悟り世代って上手い事いったもんだな。その通りだよ。俺らの若い時ってさ、欲しいもんばっかだったじゃん。車とか彼女とかさ。車のローンを返す為に働いてた様なもんだったな」
「彼らは、車は動けば良いと思ってるんだよ。車種なんて関係なく、単なる移動手段のアイテムとしか考えてないんだ。だから今はスポーツカーがほとんど売れないらしい」
その時、Aの好きなアスパラのベーコン巻きを若い男性店員が持って来た。
「君も悟り世代かい?」酔ったAは店員に訊いた。
「悟り世代っすか?」と首を捻る店員にAが説明する。
「年代的にはそうっすね。でも自分は違いますよ。欲しいものだってあるし、これからお金貯めて夢を叶えようと思ってますから」
「おお、良いね、良いね。ほら、どうだ。まだこういう熱い志を持った若者も居るんだよ」と店員の背中をポンポンと叩くA。
「で、その夢って何?良ければ教えてくれないかな?」
「良いっすよ。夢っていうのは、今からお金をたくさん貯める事っすね」
「夢って金持ちになる事?」
「いえ、違います。安泰した老後に備えるって事っすね。俺らの時代には年金制度も崩壊してるでしょうし、持つ者と持たざる・・・」
「ちょ、ちょっと待った」とAは店員の言葉を遮る。
「さっき欲しい物があるって言ってたじゃないか」
「介護付のマンションっす」
僕ら二人はしばし沈黙した後、Aは溜息を一つつくと寂しそうに呟いた。
「俺らも見習わんとな」

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