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最終更新日:2024年04月19日
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第487話「律子さん60」

インターホンが鳴った。
「ケーキ買って来たよ~」画面には母が映っていた。
「あら良かった婿殿も居たんだね」母は主人を見ると、テーブルの上にドンとケーキの箱が入った紙袋を乗せた。
私は箱の中身を確認すると母に訊いた。
「ねえ、誰か他に来るの?」
「何で?誰も来ないよ」
「じゃ、何でこんなにたくさんケーキ買って来たの?」
私は箱の中身を見渡す。
「あれも美味しそう、これも美味しそうって買ってたらこんなになっちゃったの」
「子どもじゃないんだから自分で歯止めぐらい利かせなさいよ。どうするの、こんなにたくさん」
「一人で四つくらい食べれるでしょう」
「じゃ、お母さんも四つ食べるんでしょ?」
「絶対無理!一つなら食べてあげても良いけど」
「あげても良いって、お母さんが美味しそうだからって、こんなに買ったんでしょ?何で上から目線なのよ」
「美味しそうって思うだけ。私さ、ケーキってあまり好きじゃないんだ」
「知ってるよ、そんな事」
「じゃ、何で四つも食べろって意地悪言うのよ」
「四つくらいって言ったのはお母さんじゃないの」
「その中に私を入れないでよ。私抜きで四つって言ったんだからさ」
「それじゃ残るじゃない」
「明日も二つづつ食べれば良いじゃない」
ここで主人に名案が浮かぶ。
「お隣りさん呼んで来よう」と言って主人が出て行った。
戻った主人に私が訊く。
「どうだった?お隣さん」
「今、来るってさ」
直ぐにインターホンが鳴る。玄関のドアを開けると人の良さそうな年配の夫婦が立っていた。
家に招き入れてケーキの皿を出していると、奥さんがテーブルの上に四角い箱を置きながら言った。
「これ、さっき京都の友達から送って来た生八つ橋なんですけど、私達ちょっと苦手なんですよ。よろしければ貰って頂けませんか?」
箱には無慈悲にも三〇ケ入りと書いてある。それを見た母が嬉しそうに言った。
「あら、美味しそう」昔から外面だけは良い。

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