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最終更新日:2024年04月19日
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第489話「サイクリング」

祖父が自転車を買った。
「6段変速だから、多少の上り坂もこれで楽になる」
「坂の事考えるなら、電動自転車じゃないの?」
「ああいう中途半端なもんは嫌いだ。自転車は自分の足で漕ぐもんだ」楽なら何でも良いと思うのだが・・・。
「今度の日曜日はサイクリングだ。弁当持ってな」
「日曜日はあまり天気良くないらしいよ。毎日暇なんだから、平日に行けば良いじゃん」聞こえなかったのか、祖父は
僕の意見をスルーすると、自転車で何処かへと行ってしまった。
日曜日に父とDVDを見てると、祖父からメールが届いた。変換が間違いだらけのメールを父に見せた。
「前略 小生、帰宅を遷都懸命に自転車をコグも、力及ばず。支給来援されたし」
今日は、祖父のサイクリングの日だった。と同時に、なぜ日曜にしたのか理解できた。祖父はこういった不測の事態に
備えていたのだ。この辺はかなり抜け目がない。
「行ったはいいけど帰って来れなくなったって事か、まるで子供だな」笑いながら父は立ち上がった。
「全く、自分が一番中途半端じゃん。だけど何処まで行ったんだろう」僕は直ぐに返信のメールを送った。
「あい分かった。それがしは、どこぞへ参上致せばよろしかろう」直ぐに届いて返信のメールを見て僕と父は驚いた。
「うそでしょ?凄いな爺ちゃん。ここって車で一時間以上は掛かるよ」僕等親子は世話の焼ける爺さんを迎えに車に乗
り込んだ。予報とは裏腹に雲一つ無い晴天で、気温も真夏並みに高い。言われた公園に行くと、祖父は樹木に覆われた
木陰のベンチに座り、涼し気に弁当を食べていた。
「いや~悪かったな。ちょっと無理し過ぎた」と頭をかく祖父。
「よし、俺がこれで帰ろう」父は自転車に跨った。
「少しは腹が引っ込むかもな」祖父が憎まれ口を利く。
僕と祖父が車で家に戻って間もなく、父からメールが。
「小生、足がつりて帰宅にあと一歩及ばず。来援待つ」
僕は帽子をかぶり、ジーンズを短パンに穿き替えると、大きな溜め息をついて再び車のキーを手に取り、メールを打つ
「あい分かった」

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