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最終更新日:2024年03月28日
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第491話「律子さん61」

今年の夏は、雨ばかりで鬱陶しかったが、そんな夏でも終わるのはやっぱり寂しい。そんな事を考えながら、これから必要になる秋冬物を整理していると重大な事に気付いた。冬物のコートが一着無いのだ。家中のタンスや衣装ケースを調べたが、何処にもない。何年か前に主人が私の誕生日に買ってくれた物で、とても気に入っていた。何処かに着て行って忘れた?そんな事はありえない。去年の春にまだ買ったばかりのコートを飲み屋に忘れて無くしてしまった主人とは違うのだ。ここ迄探して無いのなら考えられる事はただ一つ。クリーニング店だ。春の値引きセールで大量に出した時に貰い忘れたに違いない。私は夏の鬱陶しい余韻を残す雨の中、クリーニング店へと向かった。
店員にコートの事を話すと、沢山あるので自分で探して欲しいと言われ、店の奥の部屋へと案内された。
「これ全部ですか?」ブティックでも開けそうな量だ。
「そうなんですよ。一応は保管してあるんですが、増えるばかりで・・・今年の春ぐらいでしたらこの辺でしょうかね」と店員は大まかな範囲を指定するが、それでも結構な量だ。
「これ凄いですね」私は毛皮のコートを見て言った。
「そう、それミンクですよ。どうしてそんな物を忘れるのか理解に苦しみますよね」
「はあ・・・・」私のは毛皮のコートではないが、何だか遠回しに自分の事をいわれている様な気がした。
店員は、ゆっくり探してくれて構わないと言い残し、部屋を出て行った。
私のコートは無かったが、その代わりに何と主人のコートが見つかった。無くしたのは主人ではなくて私だったのだ。あの時は主人に酷い事を言ったと猛省するも、悪いのは私。ここは潔く謝るしかない。
家に帰ると、私は洋服ダンスに主人のコートを掛けようとして奥に何か落ちているのに気が付いた。拾い上げると、それは私のコートだった。何だかホッとしたと同時に力が抜けた。
雨も止んで太陽が出ている。今夜は発泡酒をやめてビールにしよう。それも主人が好きなエビスビールに。

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