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最終更新日:2024年04月25日
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第497話「律子さん62」

九州旅行から戻ったばかりの母は、両手に大きな紙袋をさげてやって来た。
「お父さんと行ったの?」私が訊くと母は笑いながら、
「まさか、お父さんは留守番。ゆっくりして来いって言うからさ、お友達と行って来たの」出不精の父が行くわけがないと思っ
た。
紙袋からはドラエモンのポケットの様に、いろいろなお土産が出て来た。
「明太子でしょ、さつま揚げに、芋焼酎、それから薩摩切子。綺麗でしょ~」お土産を見境なく買う母の悪い癖が出た様だ。
「まだあるんだよ。今治タオルでしょ、讃岐うどんにもみじ饅頭、出雲大社のお守り、それから・・・」
「ちょっと待ってよ。今治タオルって愛媛じゃない?出雲大社は鳥取だし、もみじ饅頭は広島じゃない」
「ああ、九州と四国と島根と広島に行って来たの。面倒だから一番遠い九州って言っただけ」山口はどうしたと思いつつも、私
は驚いて何日掛かったのかを訊くと、母は三週間と平然と言ってのけたのでここでまた驚いた。
「お父さん大丈夫だった?餓死してなかった?」自分で食事など作った事のない父が心配になった。
「それがさ、御三どんも三日で嫌になって外食で毎日好きな物ばかり食べてたんだって。いい歳して暴飲暴食ってやつ。だから
体重が六キロも増えちゃって、顔なんかまん丸よ。次に行く時は、首に縄を付けてでも連れて行かなきゃね」
「次って今度は何処へ行くのよ」
「そうだね、次はハワイでも行こうかな」
「それは無理だよ、お父さんが行くわけないでしょう」
「大丈夫、自信があるの」
「え?自信って何よ」
「そりゃ私とお父さんの秘密。あんた達夫婦だって人に言えない秘密の一つや二つはあるでしょ。ふふふふ」
何か感じ悪い。私の知らない二人の秘密っていったい何なの?と思いながら、別段秘密もない私は、悔しいのでわざと母に合わ
せて思わせ振りな態度を取った。
「そうだよね。へへへへ」と私も母に合わせて笑った。
「そうだよ。ふふふふふ」とまた母も笑う。
この夜、両親の秘密が何なのかを考え過ぎて、なかなか眠れなかった。
翌朝、寝不足でぼ~っとしながら朝食を作っていると、母から電話がきた。
「ねえ、あんた達の秘密って何なのよ、昨日あんたが変な事言うから、寝られなかったじゃないのよ」

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