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最終更新日:2024年04月19日
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第498話「冷えピタ」

父が額に冷えピタを貼っていた。風邪かと訊くと、父は黙って頷いた。
会社を早退した父を母が病院へ連れて行ったらしい。
39度もあってフラフラすると言う父に僕が言う。
「そりゃそうだろう、熱があんだから。薬飲んで寝てたら治るって」風邪などほとんど引かないので、こういう時は何かと大げさだ。
「今日は大変だったんだから、お父さんを病院に連れて行って帰って来たら、爺ちゃんも顔赤くしててさ、寒気がするっていうから熱計ったら38度あったん
だよ。今度は爺ちゃん乗せて病院行ってさ」と母。
「爺ちゃんも?」祖父の部屋の戸を開けると、やはり額に冷えピタを貼って寝ていた。僕に気付いた祖父は上半身を起こし、こういう時の決まり文句を言う。
「俺の葬式の写真は・・」
「ああ、分かってるって」
「そうか、何かあったらよろしく頼む」今にも死にそうな声を出すと、また布団にもぐり込んだ。
父は食欲がないと言いながらも夕食をペロリと平らげると、部屋で寝ようとしたが、それを母が止めた。
「そうだ、あんた爺ちゃんの部屋で寝なさい」何でだと不満を言う父に母は言う。
「一緒の部屋で寝たら、私までうつるじゃない。風邪引き同士ならうつる心配もないでしょう」なるほど。
しぶしぶ承諾する祖父の横に父の布団を敷いた。
初老のおっさんと爺さんが額に冷えピタを貼って枕を並べて寝ている光景は、何とも異様だ。
しばらく経って、父のうなされる声が聞こえた。心配になって僕と母が部屋の戸を開けると、父の胸の辺りに祖父の腕がドンと乗っていた。父は突然、びっく
りする様な大声で叫んだ。
「助けて~月光仮面~」横に寝ていた祖父は驚いて飛び上がる様に上半身を起こし、暗闇の中で目を大きく広げ、怯える様に母の顔を見ると、父に負けないくらいの大声で叫んだ。
「い、嫌だ!まだだ婆さん。お迎えはまだ早いぞ」僕は母の顔を見て言った。
「なあ、救急車呼んだ方がよくないか?」

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