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最終更新日:2024年03月28日
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第507話「余計なこと」

ベランダの窓を見て祖父が呟く様に言った。
「それにしても高いもんだ。全く余計な出費だったな」
先日、祖父がベランダの下の氷を割っていた時に、氷の塊が跳ねてガラスを割ったのが原因で、今日、新しいガラスが入ったのだった。
「そんなとこの氷は、どうだっていいんだよ。人通りのあるところが危ないんだから」新聞を見ながら父が無表情な顔で言った。
「そうだな。余計な事するとろくな事にならんもんだ」と珍しく反省する祖父。
午後になり、少し暖かくなって来ると、玄関の方から氷を割る音が聞こえて来た。
「氷を割るのが昔から好きなんだ。下手に手伝うと怒るから放っておいた方が良いぞ。それより俺の新車見たか?今朝来たんだぞ」
父は車が好きで、今まで何台乗り換えたか分からない。僕はまだ見てなかった車を見に外へと出ると、玄関脇の氷を祖父がツルハシで割っていた。そこも父が
言っていたどうでもいい所に該当する様な気がする。僕が氷割りが好きなのか訊くと。
「うん好きだ。こうやって大きな氷が剥がれた時は気持ちが良い」と言って、砕いた氷をスコップでかき集めると雪山へと捨てた。
「そのツルハシ大丈夫?すぐにすっぽ抜けるから気を付けた方が良いよ」
「ああ、ここな。楔でも打った方が良いのかも知れんな」と手を休めてツルハシの柄の頭を見ていたが、その内に直すと言いながら再び氷を叩き出した。
「おっ、こりゃでかいな。よいしょっと!」祖父がツルハシを勢いよく持ち上げるのとほぼ同時に、バ~ングワシャーと大きな音がして車のクラクションが大
音響で鳴り響いた。カーポートに停めてあった新車の助手席の窓が無残にも粉々になっていた。
何事かと家から飛び出して来た父は、呆然と今朝納車になったばかりの車を見ていた。
鳴り響くクラクションをBGMに、祖父は頭の部分がすっぽり抜けて柄だけになったツルハシを手にして言った。
「こりゃまたガラス屋を呼ばんきゃならんか」

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