それは、ポカポカ陽気の土曜日の出来事だった。
人の往来が激しい街中で週刊求人の街頭配布をしていると、年輩の夫婦が話し掛けて来た。
「ちょっといいですか？」
「はい。何でしょう？」
「この掲示板と言うのは、どんな事でも載せられるんでしょうか？」奥さんらしき人がこう聞いて来た。
「そうですね。ここに書いてある事意外でしたら、大丈夫だと思います」と掲示板掲載時の注意事項を指差して当スタッフＡが答えた。
「あの～尋ね人とかもいんですかね」少し遠慮気味に男性が聞いた。
「えっ？あっ、いいと思いますよ」
それを聞いた夫婦はお互いの顔を見合って、何やら言いにくそうな感じだった。
その様子を見たＡは「それって早い方が良いじゃないですか？よろしければ、この場で掲載する内容をお聞きしましょうか？」と、口火を切った。
「有難うございます。私共の息子なんですが、もう半年も連絡が取れなくて、私も家内も心配しておるんです。どこで何をしてるのか、全く困った奴です」
「それは心配ですね」
「そうなんです。来週のに載せて貰えるんですか？」
奥さんが懇願する様な眼差しで、Ａを見つめた。
「掲示板のコーナーは結構人気が・・・。いえ、はい。来週号には必ず」押しに弱いＡは、こうは答えた。
（つづく・・・）