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最終更新日:2024年04月19日
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第511話「泣く女」

泣き続ける真紀の声をBGMがわりに聞きながら僕とAは会話を続ける。
「ちょっと、何で無視なのよ」尖った声で真紀が叫ぶ。
「もう帰って寝ろ!」面倒くさそうな顔でAが言う。
「あんたはどうなのよ」今度は僕の顔を見ている。
「どうもこうもないだろう。人間諦めが肝心だ。なんせお前らしくない」僕が答えると真紀のBGMは更にボリュームを増した。
「あなたはどう思う?さっきから私達の話を聞いてたでしょ?」とカウンターで
一人静かに飲んでいる見知らぬ男を見ながら、泣き腫らした顔で真紀は訊いた。
「わ、私ですか?」突然の指名に男は驚いている。
「やめろよ、関係ない人まで巻き込むなよ」とA。
「あんた達じゃ話にならないから、この人に訊いてるんじゃないの!」
「いやいや、私は部外者ですから。意見を言う立場にはありませんよ」
「部外者だから客観的な立場でものを言えるでしょ」
「う~ん」と男は少し考えてから口を開いた。
「それでは僭越ながら私の率直な意見を申し上げます。原さんでしたっけ、あなたのお気持ちは良く分かりますよ。子供の頃から苦労をなされてきた訳ですからね。
でも、それは仕方ないじゃないですか。お互いが好きならそれで良いじゃありませんか。運命と思って受け入れるしかないでしょう」
「じゃ、あんたもこの二人の意見と同じってわけ」
「そういう事になりますね」
「またこれからも、病院や銀行で同じ思いをしなきゃならないの?」真紀の嘆きに笑い出してしまうA。
「婿養子にでも入ってもらえばいいじゃん。それ以外に解決方法はないよ」と僕。
「それも考えたけど言えないよ。彼は長男なんだしさ」
「考えたんだ」と笑うA。
「私は好きだな。政宗の系統かも知れませんよ」と男。
「原真紀、ハラマキって子供の頃から馬鹿にされてさ、それも結婚するまでの辛抱だって我慢してたのに酷過ぎない?何で伊達なのよ~」
来月から伊達真紀になる女の泣き声が狭いバーの中をゆっくと満たしていった。

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