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最終更新日:2024年03月29日
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第529話「律子さん68」

昼食の準備をしていると母がやって来た
「今日も暑いね~、あら、そうめん美味しそうだね。私のもあるの?」
「あるよ、茹でる?」
「うん、お願い」と言って母は、ビニール袋から薄い木箱を取り出した。
「何?何を持って来たの?」
毎度の事ながら警戒の目で母を見ると私は言った。
「別に変な物じゃないよ。そうめんだよ。貰い物だけどね。お父さんあんまり好きじゃないからさ、ここに持って来たら消費できるかと思ってさ」
「そうだね、今ちょうど茹でてるところだしね」
「あっ、サトちゃんいらっしゃい」トイレから出て来た主人が母に挨拶する。
主人は、里子である私の母をサトちゃんと呼ぶ。
「外は暑かったでしょ?」
「まるでオーブンね、顔が焼けてトーストになりそう」
「オカメさんは元気?バテてない?」と笑う主人。
オカメさんとは、母が十年以上大切に飼っているオカメインコの事である。
「あの子は平気、今朝もハコベをあげたら、待ち切れなくてエサ入れに入れる前に私の手から物凄い勢いで食べたんだから」
「ハコベ?ハコベって?」
「あら、ハコベ知らない?春の七草のひとつだよ、ここの庭にも生えてるんじゃないかな、まあ雑草だよね。オカメさんが大好きでね、もう食べ過ぎて口の回りが緑色になっちゃって」と言いながら母は台所にやって来て、器に三人分のタレを入れて食卓へと運ぶ。
「いただきま~す。暑い日はこれが一番だよね」と母は箸を割ると、嬉しそうな顔でそうめんをつまんだ。
「お父さんは何してんの?」何気に私が訊くと母はハッとした顔で言った。
「あら忘れてた。おそばをたくさん貰ったからいらないかって、あんた昨日連絡くれたじゃない、お父さんが好きだからってさ」ちょうどその時、母の携帯がなった。母は明るい声でごめ
んなさいねと笑うと、携帯を切って言った。
「オカメさんと一緒だね、待ち切れないみたい。ハコベ食べさせとくわけにもいかないしね。お湯は沸いたけど、そばはまだかって」

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