女子社員が山本に訊いた。
「お盆のお休みは何処か行くんですか？」
「どこ行っても混んでるしね。家でドラクエでもやってようかな」
「彼女と何処へも行かないんですか？」
「それがさ・・・」と山本が言い掛けたところで、羽賀がやって来て言った。
「お前ら付き合って長いから、今更行くとこもないんだろ、もうそろそろ潮時なんじゃない？」山本の肩をポンポン叩きながら笑う。
「どうしても別れさせたいみたいっすね」と山本。
「人の不幸は蜜の味って言うしな」
「でも、山本さんなら直ぐに新しい彼女が見つかるでしょうね」と女子社員。
「そうだろうな、それはそれで腹立つな」
「モテない男のやっかみかだな。ところで羽賀は何処に行くんだよ、子供も楽しみにしてるんじゃないか？」と加藤がやって来て言った。
「子供と動物園に行きます」
「何だよ近場か、どうせならもっと遠くに行けよ」
「だって混むじゃないですか、あのノロノロ運転は勘弁して欲しいです」
「確かにありゃ嫌だな、普段の運転の倍は疲れる」
それを聞いて頷く女子社員。
「どうせお前は横に乗ってるだけだろ、運転するのは彼氏なんだから」と羽賀。
「横に乗ってるだけでも疲れるんですよ、それに気も使いますしね。だから今年は女友達四人でフィジーに行って来ます」
「フィジーってまた随分と遠くまで・・・」と羽賀。
「はい、何処に行っても混むって彼氏が気乗りしないみたいだし、いっそ友達と一緒に海外へ行こうかって」
「家の奥さんも友達五人と沖縄に行くんだって」と羽賀が悲しそうに言った。
「実は僕の彼女も友達三人とハワイなんすよ」と山本。
「混んでるとか渋滞だとか文句を言ってる男どもは、みんな置いてけぼりか、家の奴もお袋と二人で沖縄だし」と愚痴っぽく語る加藤。
「じゃ、僕等三人でゴルフでも行きます？」と山本。
「混んでるだろう」と羽賀。
「渋滞は嫌だな」と加藤。
「そうっすよね」