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最終更新日:2024年04月19日
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第547話「健さんが好き」

僕と祖父と父の三人で高倉健の追悼特別展に行った。
写真展の他に、高倉健の全出演作品が年代ごとに分かれたダイジェスト版が、壁に掛けられたいくつものモニターから流れていた。
モニター横の壁には、上映された年代と映画のタイトルが順番に表示されている。
一作品が約三分ほどで、全部を見ると、かなりの時間が掛かりそうだ。
初期の作品を見ながら祖父と父は、懐かしそうに会話を弾ませている。この頃の作品は、まだあまり売れてないせいか、タイトルがとにかく酷
い。
『無敵の空手! チョップ先生』『奴の拳銃は地獄だぜ 』『俺が地獄の手品師だ』等、笑えるタイトルが並ぶ。
やはり僕は後期ともいえる幸せの黄色いハンカチや野性の証明 、南極物語からの作品が好きだが、祖父と父は俄然、初期の頃の任侠映画が好きら
しい。
僕等は二時間かけて健さんをたっぷりと堪能した。
駐車場に戻ると、祖父が「家までは我慢できんな」と言って駐車場の脇へ小走りで駆けて行く。
「おう、爺さん、立ち小便とはげせねえな」と父。
「おめえさんには、まだ分からねえだろうがな、年寄りってえのは我慢がきかんのだ。いずれ歳とったらわかるってもんよ」と祖父。
この二人、どうしようもないほどに感化されてる。
「おう、兄さん、運転頼むぜ!」と父は助手席へと乗り込んだ。
家へ着くと母が、夕飯の準備をしていた。
グリルに入ったサンマを見て父が言った。
「おっ、今日は尾頭付かい」
「何だい何だい、腹減ったんならさっさと手え洗って席に着きな」と母。
「健さん見たな」僕が呟く。
どうやら母も任侠の健さんが好きな様だ。
「今日のお昼に、お菊さんと一緒にね。そりゃあもう楽しかったの何のって」
「誰だよ、お菊さんって」と僕が吹き出す。
「おうおう、若けえの!ちいとノリが悪いんじゃねえのかい?」と言う祖父に、僕は、ぼそりと呟いた。
「不器用ですから」

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