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最終更新日:2024年04月19日
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第548話「密林の古本屋」

祖父がボロボロの本を手にしながら僕に言った。
「前からこの本探してたんだけど、やっと見つかった」
水溜りにでも落としたかの様に水を吸って膨張した本を僕に見せながら、祖父は悲しげにページを捲った。
「凄いな、何でそんな事になっちゃったわけ?」
「物置にあったんだ。ほら昔あった物置、屋根が壊れて中がびしょ濡れになった事があったろ」
「ああ、そんな事あったね。でも、壊れたんじゃなくて誰かが壊したんだろ?」
「そうだったか?最近は物忘れが激しくてな」と、とぼける祖父。
今から十年程前、祖父が物置にかかった木の枝を切ろうとして木に登った際、枝が折れて祖父が物置の上に落下、その時に屋根を踏み抜いたのが原因だった。
それは事故として仕方のない事で、怪我が無くて何よりだったが、その後の対応が悪かった。
祖父はダンボールとガムテープで補修したまま忘れてしまい、翌日の台風による大雨で物置は水浸しになってしまったのだ。
「何の本なのそれ」
「盆栽の本なんだけどな、随分と昔の本だから多分もう売ってないと思うんだ。本屋に行く度に探しているんだが、見つからない」
「中古本でいいならあるかも知れないよ」
「中古って古本屋か?」
「うん、あとでネットで探しとくよ」
「おお、よろしく頼む」
その日の晩、僕はネットで検索すると、やはり絶版になっていた。だが、中古はある様だ。その中で、僕は美品となってる物を購入した。値段も安かった。
次の日、僕は祖父にその事を知らせた。
「おおそうか、ネットってのは便利なもんだな」
「水曜日に宅配便で届くからさ、爺ちゃん受け取って」
「そうか分かった。何処の古本屋から来るんだ?」
「アマゾンから来るからさ」
「そ、そんな遠くからか!」と驚く祖父。
「場所は何処か知らないよ」
「アマゾンっていったら外国で密林だろ!何でそんな所に古本屋があるんだ」

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