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最終更新日:2024年04月25日
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第544話「黄昏て」

祖父が居間のベランダの窓から、雪景色に変わったばかりの庭を見て、大きなため息をついた。
「今年も終わりだな」祖父は庭仕事ができなくなると、毎年こうして黄昏る。きっと好きな事ができず寂しいのだろう。
「何か冬にでもできる趣味とか見つけたらいいんじゃない?あっ、碁は?」祖父はもの凄く碁が強く、父も僕も全く歯が立たないのだ。
「誰が相手してくれる?お前らじゃ話にならんぞ」
「うっ、確かに、おっしゃる通りにございます」と僕は深々と頭を下げる。
その時、玄関の方から小さな足音がパタパタと近づいて来た。
「爺ちゃん、遊びに来たぞ」隣りの家の孫の健太だった。
「おお、来たか」祖父の顔色が急にパッと明るくなった。
「お前んとこの爺さんはまたパチンコか?」
「源じいは、ばん場行った」
「源じいって源造だから源じいか?」と笑う祖父。
「うん、ここの爺ちゃんと分かりにくいから源じい」
「じゃ俺は?」
「爺ちゃん」
「そうかそうか」と言いながら嬉しそうな祖父。
「今日は馬か、相変わらずあいつも好きだな」
「俺も昔、ばん場に行ったことあるんだ」健太は少し自慢気に言った。祖父と僕は健太の昔という言葉を聞いて笑った。四歳児の昔っていつだよ。
「こ~んなでっかい馬がいっぱいてさ」と興奮気味に両手を目一杯広げる健太。
今まで黄昏ていた老人は、四歳児からエネルギーを注入されたらしく、楽しそうに笑っている。
健太は、いつも背負っている宝物が入ったリュックの中から動物図鑑を取り出すと、祖父の横にちょこんあぐらをかいて座った。
「健太、これなんだ?」
「えっ?ウサギでしょ?三匹いるよ」
「ウサギはな、一羽二羽って数えるんだ」
「へ~っ、じゃ三羽だな」
「そう、じゃこれは?」
「馬に決まってるし」
「そうだ、馬だな。馬は何て数えるか分かるか?」
「うん知ってる。一着二着

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