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最終更新日:2024年03月28日
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第562話「再就職・後編」

Aは元上司の話を続ける。
「ああいう人の事を、羊の皮を被った狼っていうんだろうな」と笑う。
「そうか酒乱ってことか」
「いやいや、違うよ。毎回じゃないからさ、まあ義理と人情の人ってとこかな。定年後もライバル会社から好条件で声が掛かったけど、うちの会社への背信行為にあたるといって、ガンとして受けなかったそうだ」
「へ~筋を通したって事だ」
「うん、その後の再就職先も、うちの会社と全く畑違いの職種を探したそうだ」
「もう少し融通が利いても良かった様に思うけど」
「そうだな。再就職に三年も掛かったんだから、家族も大変だったと思うよ。礼節を重んじ、曲がった事が嫌いな人だから、仕事も全て正攻法さ、裏をかくなんて事は絶対にしない。だから分かりやすい人なんだ。今は忖度なんて古臭い言葉が流行ってるけど、忖度しやすい人だったよ」
「良い上司だったんだな」
「うん、尊敬してる。ここ迄はな。さっき切れると大変だって言ったろ?」と言った後、何かを思い出した様にAは笑う。
「こういう席で切れると必ず口にするセリフがあってな、貴様ら!いいかげんにしろ!って大声で怒鳴るんだ。この言葉が出ると後は修羅場だな。俺も何回殴られたか分からん」
その時、店の奥から何やら大きな掛け声が聞こえる。
「じじい、じじい、じじい」一気飲みをさせている様だ。
今迄のAの話を聞き、他人事ながらも心配になる。
日本酒オンリーのAは、銚子を指先で摘まんで左右に振るが、音がしないとわかると、店員に注文をしてトイレへと向かった。
「さすがじじい!だてに長生きしてないじゃん」奥から若い男の声が響いて来る。
やっと見つけた再就職先、じっと耐えているのだろう。
そう思ったのも束の間、遂に店内に怒号が響いた。
「貴様ら!いいかげんにしろ!」僕はハッとして奥の席へと急ぐ。怒号の主はAだったのだ。
上司の意思を部下が見事に引き継いだ瞬間だった。それも余分な部分を含め、全て完璧に。

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