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最終更新日:2024年04月19日
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第563話「律子さん75」

母の愚痴は聞き馴れてるつもりでいたが、聞かされる度に呆れたり腹が立ったりする。今度もそうだ。
「親が離婚しようとしてるのに何とも思わないわけ?」
「だって、本人同士の問題でしょ」一々真面目に聞いてたらこっちがもたない。
「相変わらず冷たいんだね」と母は深い溜息をついた。
「も~う、今度は何なのよ?」要は聞いて欲しいのだ。
「町内の敬老会で温泉に行く準備ができてないって物凄い剣幕で怒るのよ。もう、ふて腐れちゃってさ、自分で用意する!って言ったのはいいけど、靴下はどこだ!下着はどこだ!この前買った服はどこだ!って大騒ぎ、もうタンスやら洋服ダンスやら、泥棒が入ったみたいにぐちゃぐちゃ」
母はとても呑気な性格なので、この辺がせっかちな父とよく対立する。
「お母さんが準備しないから、お父さんも痺れを切らしたって事なんでしょ?」
「準備って何日前からすればいいの?たかが一泊で温泉に行く為に一週間も前から準備をするものなの?」
「えっ?そうなの?たかが一泊で?そりゃお父さんが悪いわ、せっかち過ぎる」
「でしょう?だから頭にきたから、もう三日も口利いてやってないの」
「離婚したらどうするの?」
「ここにおいてもらおうかと思って、婿殿も優しいから承知してくれるよね」
「ちょっと待ってよ、旦那が何て言おうと私は嫌だからね」母と私は元々合わない、合うはずがない。
「じゃ、あんたがお父さんと暮らしなさいよ。私が婿殿の面倒を見るから」言ってる事が、もうめちゃくちゃだ。
久し振りに親子で大喧嘩をした。
母が怒って出て行った後、案の定父から電話があった。
「律子!お母さんに何を言った!ずっと泣いてるぞ」どうやら今回の夫婦喧嘩は何とか収束した模様だ。切っ掛けは何だって良い。
私が母とのやり取りを伝えると、父は驚いた様だ。
「お父さんもさ、自分でできる事はやらなきゃね。お母さんが先に死んだらお父さん一人で生きて行ける?」あえてここは強めに言った。
「俺の方が先だろう、心臓で何回も倒れてるんだから」
「意外とさ、お父さんみたいな人がわりと長生きしたりするんだよ。柳に風じゃないけどさ」
「お母さんは大丈夫だ、健康だけが取り柄なんだから」電話の向こうから母が怒る声が聞こえてくる。
「逆にお母さんみたいに普段病気しない人が突然ポッカリと逝ったりするんだよ」
この後も、私は散々父を脅かして電話を切った。
後日、母から電話が来た。
「どういう風の吹き回しか、お父さんが料理教室に通い出したんだよ。もう気味が悪くてさ」

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