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最終更新日:2024年04月19日
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第566話「律子さん76」

会社に行くと小林幸子の席が空いていた。
「小林さんがまだ来てないって珍しいね」私は隣りの席の田中好子に言った。
この二人は芸能人と同姓同名なのだ。
「何でも、今日はお休みするらしいです」私が知る限り小林は無遅刻無欠勤だったので驚いた。
「どうしたのかな?体調でも悪いのかな?」
「とにかく何も手につかなくなったらしいです」
「えっ?なにそれ、どこか具合が悪いとかじゃなく?」
「具合も悪いみたいですよ」
「風邪でも引いたのかな?あっ!まさか五月病とかじゃないよね」
「あり得ないでしょう」
「だよね、絶対ないよね」と言って二人で笑う。
欠勤の電話を受けたという課長に訊いてみると。
「えっ?ああ、風邪かな?」何とも頼りなく、あやふやな返答だった。
私はお昼休みに小林に電話をしてみる事にした。
「心配ですよね。私からもお願いします」と田中。
そうして昼休みになり、小林の携帯に連絡をした。
「もしもし、どう?具合は」
「あら律っちゃん。心配してくれたの?ありがとう」思ったより元気な声だった。
「な~んか仕事する気になれないんだよね。律ちゃんさ、心にポッカリ穴が開いた感じって分かる?」
「うん何となく分かる様な」
「そう、それなのよ。お爺様が亡くなられた時よりショック」話の節々に小林の育ちの良さが垣間見られる。
「私の永遠のアイドルだったのよ。もう悲しくて」
「えっ?何?何の話?」
「昨日、秀樹が亡くなったじゃない」
「秀樹って?西城秀樹?」
「他に誰が居るっていうのよ!秀樹っていったら西城、西城っていったら秀樹でしょう!」突然、ヒステリックな小林の声が私の耳の中いっぱいに広がる。
燻っていた火に油を掛けてしまった様な状況だ。
思わず高橋英樹だって居ると言いそうになったが、これ以上刺激しない方がいい。
私は何とかなだめながら電話を切った。
「小林さんどうでした?」と能天気な顔で訊いてくる田中に私は言った。
「えっ?ああ、風邪かな?」

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