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最終更新日:2024年03月29日
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第582話「愚か者」

高校時代のAとBの二人に会うのは久しぶりだった。
「なあ、知ってるか?Cのやつ、SNSで自分の歌を動画で流してんの」とA。
「おお、知ってる知ってる仲間内じゃ有名だぞ」と僕。
「えっ?何それ?」とBはスマホを手にしながら身を乗り出すと、Aに教えてもらったサイトを早速見る。
「おお、Cだよ。へ~っ、これってクラスのやつら知ってるのか?」と笑うB。
「多分知ってるんじゃないか?お前は誰から聞いた?」とAが僕に訊く。
僕は名前を言って、ほんの一週間前に聞いたことを話す。
「俺もだ、あいつはクラスの拡声器みたいなやつだったからな」と笑うA。
「それじゃ身内で盛り上がってるだけか」とBが笑いながら誰かにLINEをすると、直ぐに返信が来た。
「やっぱみんな知ってるな。それにしても酷いな、俺より下手だぞ」とBは笑う。
「いいじゃん、幸せそうで」と酎ハイを手に笑うA。
「最近やたらとカウント数が増えてるけど、全部身内ってことだな」と僕。
「間違いないな、みんな面白半分で見てるんだよ、変に勘違いしなけりゃいいけど」とBが真顔で言う。
「そりゃないだろ、あいつもバカじゃない」とA。
「だけど、高校の時のあいつの夢は歌手だぞ、小学生じゃないぞ、高校生だからな」僕の言葉に一瞬二人が固まる。
「あっ、新しいのが上がったみたいだぞ」と言うBのスマホを僕等も覗き込むと、ド素人丸出しの喋りでCのコメントが流れる。
「え~、最近もの凄い勢いで、カウント数が増え続けています。多くの皆さんに支持されて、凄く嬉しいです。長年の僕の夢が叶う日も近いかな?なんて感じてます。
僕の夢?それは歌手になる事です。近々、会社に辞表を出して上京します。ファンの皆さん、これからも応援よろしく。
それでは、ちょっと古いですが僕の大好きな曲をお聴き下さい・・・」
「おいおい、誰か何とか言ってやれよ、奥さんと子供はどうなるんだ?」僕の言葉に二人も慌てていると、Cのずれた歌声が流れる。
「お~ろ~か~者よ」

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