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最終更新日:2024年04月19日
最終更新日:2024年04月19日
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第583話「イソップ童話」

僕は一向に働く様子がないAに言った。
「そろそろ仕事を探さないのか?お前のいう自由も、もう充分満喫しただろう」
「予定の半年まで、まだ二ヶ月ある」と笑うA。
「ホント何を言ってもダメなのよ」Aの奥さんが僕にこぼすと、せがむ息子から絵本を受け取り、ページを捲ると読みだした。
(パンのかけらを運ぶアリにキリギリスがいいました。「おい、アリくんたち。そんなに汗をびっしょりかいて、何をしてるんだい?」
「これはこれはキリギリスさん、わたしたちは食べ物を運んでいるんですよ」
「ふーん。だけど、ここには食べ物がいっぱいあるじゃないか」)奥さんの流れる様な朗読が聞こえて来る中、Aの話は続く。
「蓄えはまだあるから大丈夫なんだ」Aは奥さんの方をチラチラ見ながら話す。
更に奥さんの朗読は続く。
(「でもね。キリギリスさん。今は夏だから食べ物がたくさんあるけど、冬が来たら、ここも食べ物はなくなってしまいますよ」)
Aの奥さんは昔、アナウンサーを目指しただけあって、声も綺麗な上、抑揚を付けた朗読は、思わず引き込まれそうになる。
「・・・だけどさ、まあ少し飽きて来たってのもあるんだな実際」と何故か少しトーンダウンするA。
(「まだ夏が始まったばかり。冬の事は冬が来てから考えればいいのさ」
それからも毎日キリギリスは陽気に歌って暮らし、アリたちはせっせと家に食べ物を運びました)
息子のホッペを両方の掌でムニュ~と押しながら奥さんの声が急に大きくなる。
(そしてとうとう、寒い寒い冬がやって来ました。)
息子が、キャッキャと喜びながらAの方に手を伸ばして「パパ~」と叫ぶ。
急な息子の声に驚いたAは、首を振りながら慌てて、「違う違う!俺はキリギリスじゃないぞ。明日からちゃんと仕事探すんだから」あまりのAの慌てぶりに大笑いする奥さんと僕。
「キリギリスは嫌か?」と笑いながら僕が訊くと。
「うん、嫌だ!俺は家族の為にも1日でも早く仕事を見つけるよ」
イソップ童話が大人にも効果があるとは思わなかった。

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