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最終更新日:2024年03月29日
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第585話「マーちゃん50」

友達の住むアパートの階段を上っていると、子供と大人が何やら言い争ってる声が聞こえて来た。
「何をもって、勝ち組負け組っていうんですか?」
友達の息子である小学五年生のマーちゃんの声だった。
僕は階段途中で立ち止まり、耳を澄ませた。
「いいんだよ、俺は」相手は中年男性の様だ。
「どうしても勝ち負けを判断するのであれば、それは死ぬ間際ですよ。人生何があるか、どんなチャンスがあるか分からないじゃないですか!野球だって九回裏2アウトからだって逆転することもあるんですよ。そんな投げやりにならないで下さい」毎度の事ながら大人顔負けのマーちゃん節がこんな所で炸裂している。
「何でお前みたいなガキに説教されなきゃならないんだ!ほっとけ!」
「僕は年上の人にお説教だなんて、偉そうな事を言ってるつもりはありません。もしそう感じるのなら、あなた自信がこのままじゃいけないと感じてるからじゃないですか?」と更にマーちゃんのトーンが上がる。
「お願いだから、おじさんとおばさんを安心させてあげて下さい。お願いします」最後はほとんど泣き声だ。
男が「ふん!」と鼻を鳴らすと同時に、足音がこちらに近づいて来て、黒いキャップを被った中年の男性とすれ違った。
玄関ドアの前に、ラップの掛かった皿を持ってマーちゃんが立っていた。
「よっ!何だ、どうした?」僕が何事もなかった様に側に寄って皿の中を見ると、たくさんの稲荷ずしが入っていた。
「これ、そこの角の部屋のおばさんに頂いたんです」目に涙を溜めて、元気なくマーちゃんが言った。
「おっ!美味そうじゃん」
「本当にいいおじさんとおばさんなんですよ。なのにあんな人が息子で・・・」
「息子って、今の黒キャップのおっさん?」僕の問いにマーちゃんが力なく頷く。
「はい、お稲荷さんを持って来てくれました」
マーちゃんは深い溜息をつくと、悲しそうな顔でじっと稲荷ずしを見つめた。つづく

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