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最終更新日:2024年03月29日
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第588話「律子さん80」

同じ課で私の隣りに座っている田中好子が言った。
「昨日、実家からジャガイモが届いたんですけど、いりませんか?」
「うん欲しい。でも少しでいいよ、少しでね」と私は伝票を打ち込む作業を中断して念を押す様に言った。
「良かった~貰ってくれて」
「何よ、またお父さん沢山持って来たの?」
「そうなんですよ。家の父は加減を知らないもので」
私はこの時、去年とうきびを死ぬほど沢山玄関前に置いていかれ、途方に暮れたことを思い出した。
「あんたもね」と言いたいところだが、我慢した。
「そんなにあるんだったら、会社の人達に声掛けたらいいじゃないの」
「でも、全員の分は無いので、小林さんと律子さんだけにと思って」
「そうなの?ありがとう。小林さんは、いるって?」
「はい、貰ってくれるって言ってました」
「スーちゃんさ、貰う方は有り難く頂戴するんだから、貰ってくれるなんて言い方しなくてもいいよ」
退社時間になり、仕事が終わった田中は帰り際、残業中の私に言った。
「律子さんのお家に届けておきます」と言い残して帰宅した。一瞬不安がよぎる。
その後も私が仕事を続けていると小林が来て言った。
「律ちゃんもジャガイモ貰うんでしょ?うちは五人家族だけど、律ちゃんとこは二人でしょ?さばける?」
「えっ?少しでいいって言ったから、そんなに持って来ないと思うけど」
「甘いね律ちゃん。分かっちゃないね、スーちゃんの貰ってくれるって言い方がポイントだよ。普通はあんな卑屈な言い方しないよね」
そういわれてみれば・・・確かに。相手に申し訳ないという気持ちがあるからこそ、遠慮気味で卑屈な言い方になってしまうのかも。
仕事が終って帰宅すると、玄関前には肥料袋?に入ったジャガイモが一つだけドンと置いてあった。ちょっと多いけど、これならいいかと思い、私はほっとして玄関を開けると、中には同じ袋が既に四つ並んでいた。
ちょうど主人が運び入れてる最中だった。
大量のイモを見て、去年の夏同様に、主人と二人で途方に暮れるのだった。

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