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最終更新日:2024年03月29日
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第613話「優しかった人」

出社したばかりの山本に加藤が言った。
「もう落ち着いたのか?」
「はい、忙しい時期に休み取ってすいませんでした」
「いくつだっけ?」
「八十六歳だそうです」
「大伯父ってことだな」
「そうっすね、祖父の兄っすからね」
「だけど昔はさ、八十六歳ったら、随分と長生きしたんだな~って思ったもんだけど、今じゃ普通だもんな」
「そうっすね、亡くなった伯父の姉なんか九十二歳ですけど、まだ元気っすもん」
「だろう?そうなんだよ。俺の婆さんなんかさ、百二歳まで生きたんだもん。奥さんは元気なのか?」
「はい、伯母も去年の秋で八十歳になったって言ってました。まだまだ元気っす。伯父が少し痴呆が入ってまして、結構辛い思いもしたらしいっすけど、まあ、良いころ合いだったんじゃないっすか?」
「辛いって、暴力とかふってたわけじゃないんだろ?」
「それは無いっすね。とにかく優しい人でしたから、会社を退職してからは、死ぬ間際まで掃除や洗濯を手伝ってましたからね」
「へ~っ、何だか耳が痛い話しだな」と笑う加藤。
「じゃ、伯母さんも幸せだったんだろうな」
「それが、優しいのは伯母にだけじゃなくて、女性全般に優しかったんっすよ」
「女性全般?」
「はい、優しいって言えば聞こえは良いんですけど、女癖が悪かったんすよね。伯父夫婦には、子供が居なかったんで、僕を実の孫みたいに可愛がってくれまし
て、子供の頃によく遊んでもらったんすけど、今思うと、あの頃でも超イケメンでしたね」
「お前のその顔も伯父さん譲りってことか」
「そんな事ないっすよ。僕も伯父くらいモテたらって思いますけど」と笑う山本。
「伯母が毎朝、伯父の顔を見るのが辛かったそうです」
「顔?何で?」
「伯父は毎朝、優しく伯母に、おはようマサエって挨拶をしていた様なんです」
「それのどこが辛いんだ?」
「伯母の名前は、秋子って言うんすよ」

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