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最終更新日:2024年04月18日
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第614話「ご苦労様です」

肌から煙りが出そうなほど強い日差しの中、麦わら帽子かぶり、庭いじりをしている祖父に僕が言った。
「爺ちゃん、今日はもう止めた方が良いよ。死ぬぞ」
「ああ、後は、ここをちょちょっとやれば終わりだ。今日は何度あんだ?」
「三十八・八度だとさ」
「え~っ、本当か、そりゃ凄いな。冗談抜きで死ぬな」と笑いながら、祖父は首に掛けたタオルで、汗まみれの顔をゴシゴシと拭いた。
そこへ隣の家の孫である四歳児の健太がやって来た。
「今日は源じいが暑いから外で遊ぶなって、爺ちゃんも外で遊んだらダメだ」
源じいとは、隣の家に住む健太の祖父で、名前は源造と言い、うちの祖父とは古くからの友人である。
「俺は遊んでるんじゃない」
「じゃ何してんだ?」
「うん?まあ仕事かな?」
「そっか仕事か、ご苦労様です」と急に背筋を伸ばして頭を下げる健太。何処で覚えて来たのか・・・。
エアコンが効いた家の中は、まるで別世界だ。
「うわ~涼しい~」
「おい健太、その服脱げ、汗でベトベトでないか」
祖父が、先日買ったTシャツを健太に着せた。
「さっき外で少し仕事したから汗かいたんだ」
「そっか、お前も仕事してたのか」と笑う祖父。
「仕事してる人にはご苦労様ですって言うんだぞ」
「おお、そうかそうか、ご苦労様でした」
「でも、俺の仕事はまだ途中だったんだ」
「そりゃダメだな。でも今日は暑いからまた今度にしたらいい」
「あと少しだから、ちょちょっとやって来る」
そう言うと健太は、なぜか箒と塵取りを持って外へと出て行った。何処を掃くんだろう?嫌な予感がする。
仕事を終えて健太が戻る。
「ああ~家の中は天国だな」
健太は年寄りじみた事を言いながら、持参した水筒の麦茶を勢いよく飲んだ。
「ご苦労様」と祖父が笑いながら健太に頭を下げる。
「あのさ爺ちゃんさ、いつも俺が植木鉢を落とさないかハラハラするって言ってたけど、もうハラハラしなくて良いから」
祖父はじっと健太の顔を見ると言った。
「お前、他に何か言う事はないのか?」
「ご苦労様です」
「違うだろ!」祖父が叱る。
健太は今にも泣きだしそうな顔で言った。
「植木壊してご免なさい。ご苦労様です」

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