外から戻った山本は、エアコンが効いた社内で嬉しそうに言った。
「涼しいっすね～まるで別世界だ。外は凄いっすよ」
「今日は三十五度になるそうですよ」と女子社員。
「まだお昼前だけど、もうそれくらいはありそうだよ。風が少しあるけど、熱風って感じだしさ」
「（情熱熱風せれなーで）って感じか？」と加藤。
「何すかそれ」
「知らんのか？マッチのヒット曲だよ」
「いつの曲っすか？それにマッチってなんすか？」
「お前、マッチも知らんのか？近藤真彦だよ」
「ああ、ジャニーズの人っすね。人参娘を歌った人」
「それはトシちゃん、田原俊彦だ。変な事知ってんな」
「情熱の嵐って歌もありましたよね」と女子社員。
「あら～随分と古いの知ってるな、それは西城秀樹だ」
「それって、アチチの人っすよね。去年亡くなった」
「アチチは郷ひろみだろう。まだ生きてるよ」
「元々はトリオだったんすよね。西城秀樹と郷ひろみと田原俊彦って」
「田原俊彦じゃなくて野口五郎な。年代が全然違う。それにトリオじゃないしな」
「でも昔、たもきんトリオって流行ったって母が言ってました」と女子社員。
「たもきんってタモリと欽ちゃんか？二人で終わっちゃうだろう。それを言うなら、たのきんトリオだ。何か混ぜこぜになってるみたいだな」と笑う加藤。
「そう言えば、アチチの歌は羽賀さんが得意っすよね。よくカラオケで歌いながら踊ってます」と山本が笑う。
「でも時々思うんですけど、加藤さんと羽賀さんって少し似たところありますよね」笑いながら言う女子社員に、山本も頷きながら言う。
「そうそう、考え方っていうか、何だろう？センスっていった方が良いのかな？」
「そりゃ失礼だろ、俺のセンスがチンパンジー並みだって言ってるに等しいぞ」と加藤が憤慨しているちょうどその時、羽賀が外から戻った。
そして開口一番。
「いや～外は熱いね～まさに（情熱熱風せれなーで）って感じだな」