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最終更新日:2024年03月28日
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第631話「律子さん87」

札幌の伯母の家に行く途中、道の駅でソフトクリームを食べるという目的を果たした母は、満足したのか、今度は助手席に乗ってる事が苦痛になってきた様だ。
あれほど嫌がっていた高速に乗ろうと言い出した。
「私はスピード出すから嫌なんじゃなかったの?」
「それもあるけどね。本当はさ、ゆっくり景色を楽しみたかったの」と母は大きなあくびをしながら言った。
「ちょっと眠ろうかしらね」
「景色は見なくて良いの?」
「高速に乗ったら、景色なんか楽しめないよ」
「景色が見えない程速いわけないでしょ」
「気忙しい景色は嫌なの!」
母のシートがウィーンという音と共に後ろへ倒れる。
「あらっ!電動なの?便利だね~あららら良いね~これ」更に母は、シートをいっぱいに倒した。
「これってマッサージはできないの?」電動という事で、単純にマッサージ機を連想した様だ。
「助手席に乗ってるって暇だしさ、マッサージができれば最高だね。そんな機能ってないよね?」ウィーンという音と共に母がゆっくりと起き上がってくる。
「そんなの聞いた事ないよ」
「だよね、何で誰も気づかないんだろうね。ちょっと考えれば分かるだろうに」と自分勝手な上から目線。
「あれ?寝ないの?」
「どの角度が良いかなと思って・・・」その間も、ずっとシートはウィンウィン音を立てて動いている。
「お父さんが言ってたけど、スイソウで走る車が出たって」ウィーン、ウィーンとシートを前にスライドさせたかと思ったら、今度は後ろにウィウィーン。小さな母の身体がシートと共に前後する。何してんだか・・。
「水素ね、知ってるよ」
「水で走るって事でしょ?」
「いや水素でしょ」
「水槽ったら入ってるのは水じゃないの」ウウウィーウィ・・・ウィーウィーン。
「水槽じゃくて水素だから」
「ああ~水素かい。変だと思った」と大笑いする母。
「最近、お父さん滑舌が、あら?変だね。シートがうんともすんともいわなくなった。こういう機械物はダメだね~」と母が言うと、ウィ・・ウィ・・ウィーとシートがぎこちなく動き出した。
「何なのこれ、これじゃ
まるで滑舌が悪くなったお父さんと同じゃないの。こういう物は、やっぱり手動に限るね」散々しゃべりつくすと、間もなくして母の気持ち良さそうな寝息が聞こえて来た。

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