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最終更新日:2024年04月19日
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第645話「忘れん坊」

玄関からリビング迄の間をドタドタと足音が響く。
隣りの家の孫である健太がやって来た。
「爺ちゃ~ん!おもちゃ屋さん行こう!」
「おもちゃ屋?」と祖父が呟いた後、二人の視線が連動しいるかのごとく、僕の顔をじっと捉える。
「何で俺の顔みんだよ」
「だって車出してもらわんと行けんだろう」と祖父は言ってから健太に向かって。
「お年玉は無駄使いしたらダメだぞ、将来の為に貯金しないと。この先、年金もどうなるか分からんからな」
「爺ちゃん、誰に言ってんだよ」と笑う僕。
「あっそうか、四歳児に老後の話なんておかしいな」
「ねえ、ねえ、おもちゃ屋行こうってば」何の話をしてるんだ?といった顔で僕の手を引っ張る健太。
「今日は用事があるから、それが終わってからだな」
「じゃあ、おじさんと行く」と家の中を見回す健太。
「おじさんとおばんさんは、旅行に行くって、昨日言ってたろう」
「あっ、そうだった」
「健太も俺と同じで忘れん坊だな」と笑う祖父。
「よし、それじゃ健太の為に早く帰って来るよ。良い子にして待ってろな」
「よし、待ってちゃるか」
正月に帰省してる友達の家へ行くと、学生の頃お世話になったお袋さんが、大喜びで迎えてくれた。
「年に一度、お前らにこうやって昔の様にご馳走するのが、お袋の生き甲斐らしいよ。俺が唯一できる親孝行だからさ、これからも協力してくれな」
その後も昔話で盛り上がると、時間もあっという間に過ぎていく。
「あれ?そう言えばさ、何で今日は酒飲まないんだ?」と友達の一人に訊かれ、健太の顔がパッと頭に浮かんだ。
慌てて家に電話を掛けると祖父がでた。
「おい、どうした!何処にいるんだ!早く何とかしてくれ!」悲痛な祖父の声と共に、健太の泣き声がBGMの様に聞こえて来た。
そして健太が電話口で泣きながら叫んだ。
「良い子にして待ってたのに~この忘れん坊~」

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