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最終更新日:2024年03月28日
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第664話「ひとカラ」

祖父が大きなあくびをしながら僕を見て言った。
「あ~暇だな~」
「カラオケでも行ったら?」
「一人で行ってもつまらん」
「一人カラオケって流行ってんだよ。ひとカラって言うらしいんだけど」
「ひとカラな~それにしても一人で何が楽しいんだ?」
「俺もやったことないけど、練習とかする為じゃない?」
「人前で歌う為に人知れず練習をするって事か」
「あと、自分だけの世界に浸りたい人とか」
「ちょっと理解できんな」
「楽しみ方も人それぞれって事さ」そう言う僕を、祖父はまじまじと見ながら、
「お前も暇なのか?だったら碁でもやるか?」
「あっいや、爺ちゃん強すぎるし。それに俺、これからデートあるしさ」
「何だ、孤独な老人一人残してお前だけ楽しんで来るってか、あっ!濃厚接触だな。濃厚接触する気だな」
「このエロジジイ!親父もお袋も居るんだから独居老人みたいな事いうなよ」
「あいつらだって好き勝手やって、俺の事なんか眼中にないんだ。現に今も何処行ったのか分からんし」
「二人でスーパーに買い出し行くって言ってたじゃん」
「ふん、俺は直接言われたわけじゃない」悪天候やらコロナやらで、引きこもりが続いたせいか、イライラが溜まってる様だ。
「おい、何をごちょごちょ言っとるんだ」隣りに住む源造さんがやって来た。
「明日から健太が来るらしいぞ。こっちに来れないから最近は機嫌が悪いそうだ」
健太は源造さんの孫で、よく我が家にも遊びに来る。というより、毎週我が家で祖父と遊んでいる。
「そっか、いよいよ来るか」
今迄の仏頂面が嘘の様に、祖父は相好を崩す。
「へ~最近、健太も機嫌が悪いんだ。まるで誰かと一緒だね」と僕が笑う。
「あっあれだ源造、お前も暇だろうし、これから一緒にひとカラでも行くべ」
マスクをして玄関の方へ行った祖父を尻目に、源造さんが言った。
「お前も大変だな、ここの爺さんも健太と同じ四歳児みたいなもんだからな」

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