会社から帰宅して玄関のドアを開けると、父と祖父の大声が聞こえて来た。
ここ最近なかったので、そろそろかな？とも思っていた矢先の事だった。
「どうしたんだよ、怒鳴り声が玄関まで聞こえるぞ」
「こいつが訳の分らん事ばかり言うからだ！」と祖父。
毎度の事なので、母は知らん顔で、いつもの様に夕飯の支度をしている。
「ちゃんと教えてやっただけだろう」と父も負けずに大声を出す。
「ふん！偉そうに」
「本当に素直じゃないな、このクソジジイは」と父。
「そもそも、お前がそうやって憎まれ口をきけるのは、誰のお陰だ！親を何だと思っとるんだ！馬鹿たれが」
「お袋には感謝してるよ」
「俺には感謝せんのか！」
「するか！甲斐性無しの親父のせいで、お袋は随分と苦労をして俺達を育ててくれたからな。だからお袋にしか感謝してない」
「あ～あっ、俺を甲斐性無しって言うのか？それを言っちゃうか？お前、それを言っちゃあ、お仕舞いだぞ」
「はい、もう終わり。爺ちゃん、そこから鍋持って来て、今日はすき焼きだからね」と母が食卓の上にコンロを置きながら言う。
「おお、今日はご馳走だな」と、たちまち祖父が笑顔に。
「何が原因だよ」と僕。
「十勝石は十勝にしか無いって言うから、北海道全域で採れるし、本州でも採れる地域があるって教えただけなんだ」と父。
喧嘩の原因は、やっぱり今回も呆れるほど下らない。
僕が祖父に向かって言う。
「十勝石は黒曜石っていって十勝以外でも採れるんだ」
「じゃ何で十勝石なんだ？」
「う～んそこまでは知らないな。十勝で多く採れるのかな？スマホで調べてみたら？前に便利な調べ方教えたの覚えてる？」僕がそう言うと祖父は頷き、スマホに向かって大声で叫ぶ。
「ヘイ！ケツ！・・ヘイ！ケツ！・・・・反応せんな」
それを聞いた母と父が笑い出し、それを見た祖父も、
「何を笑っとるんだ？」と一緒につられて笑い出す。
「爺ちゃんケツじゃないって、シリだよ。ヘイ！シリ