僕の知人に、鉄工場を経営する社長がいる。
その人は大の犬好きで、もともとは無口な人なのだが、犬の話しになると堰を切った様に話し出す。
この社長はイギリスのチャンピオン犬であるシェパードを飼っている。値段を聞くと思わずのけぞってしまう様な金額だ。
奥さんも旦那に勝るとも劣らぬ大の犬好きで、これまた外国産のドーベルマンを飼っている。
名前は『アルフォンス』精悍な顔つきからピッタリの名前である。社長としては、この名前が気に入らないらしく、「普通そんな名前付けるか？ここは日本だぞ。日本人は日本人らしい名前にしないとダメだ」
犬に対して日本人と言うのは、おかしいが、この夫婦にとって、犬は子どもの様なものなのだろう。
「おかしいよな」と僕に同意を求めるのだが、社長と僕の犬に対しての価値観が明らかに違う以上、何と答えて良いものやら・・・。
社長宅の裏には、犬用に買った５百坪の広い土地があり、いつもそこで犬を走らせている。
社長は奥さんとアルフォンスをかなりライバル視している様で、奥さんがフリスビーを投げるとアルフォンスが空中でキャッチして持って来る。
社長が棒切れを投げるとシェパードは知らんふり。
「なにやってんだコロ。バカ犬に負けるな。早く取って来い。おい！コロ」