車の修理会社を経営する友達に、車検を頼んだ。
今は混んでいるので、三日程掛ると言われ、代車を用意してもらった。
「確かに動けば良いって言ったけど、随分古い車だな。大丈夫か？」友達に確認する様に僕は言った。
「大丈夫だって、ちゃんと動くから」と言いながら僕に車のキーを渡した。
「スペアーも渡しておくからさ、結構無くす人多いんだよな」必要無いと思いながらもキーを受け取った。勿論リモコンキーではない。
翌朝、寝坊をした。車に飛び乗り、エンジンをかけようとしたが、キーが何処にも見当たらない。車を開けたのだから、何処かにあるはずだと、ポケットの中やら、座席の下を確認したが、何処にも見当たらなかった。結局スペアキーを使うことで、何とか会社には間に合うことができた。ちょうど部長も出勤したばかりで、車から降りて来た。僕が挨拶をしながら車を降りようとした時、部長が話し掛けて来た。
「何？車変えたのか？何だか古い車に見えるけどな」
部長はとても不思議そうな顔をしていた。僕が代車だと伝えると「変わってるよなこの車。鍵が二個必要なのか？エンジンかけるのと、ドアに挿し込むやつと」
「ドアに差し込むやつ？どう言う事ですか？」
「ほらこれ・・・」部長はドアの鍵穴に刺さったままのキーを指差して言った。