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最終更新日:2019年11月11日
最終更新日:2019年11月11日
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第455話「書き初め」

祖父の部屋を開けると、こちらに背を向けて正座をしている祖父の姿があった。
膝元には、棒状の文鎮が乗った縦長の半紙があり、それはまるで糊付けされた反物の様にピーンと張った状態で置かれている。
書き初め?僕の存在に全く気付く様子もなく、祖父は半紙を前にじっと集中している。
祖父が筆で何かを書くのを見た事がなかったが、こうしてちゃんとした道具を持っているって事は、それなりの物を書けるに違いない。
何て書くのだろう?僕の期待は、否が応にも膨らむ。
熱い眼差しを祖父の背中に向けていると、一瞬祖父の頭がガクンを前にうな垂れた。直ぐ元通りに背筋を正したが、今度は頭が少しずつ後ろの方へのけ反る。
僕の期待は、ここで一気に萎んでいった。どうやら祖父は船を漕いでいる様だ。期待した僕が馬鹿だった。
傍へ行くと、正座した祖父は口を半開きにし、雨乞いでもしてるかの様に天井を仰ぎ、すやすやと気持ち良さそうに寝ていた。
何とも器用なものだと感心しながら、こんな顔した妖怪がいた事を思い出す。
祖父の傍に「書道」と白文字で書かれた黒い鞄が目に入った。それは僕が小学生の時に使っていた習字セットだった。
祖父が自分で揃えた道具ではなかったのだ。懐かしのあまり中を開けると、当時書いた物が出てきた。
「賀正」「永遠」「希望」それぞれにオレンジ色の墨で先生の添削の後があった。
僕は、まだ腰元が白く残っている筆を取り出し、固まった毛先を指で揉みほぐすと、墨汁が満たされいてる硯の中で、たっぷりと墨を吸わせた。
それと同時に、墨の匂いが部屋の中にプ~ンと漂い、まるで小学生当時の書道の時間にタイムスリップでもしたかの様だった。懐かしい気持ちを抱きつつ、さて何て書こうか。
半紙を僕の方に移動させたところで祖父の眼がパッと開いたと同時に「はい!」と言って右手を高々と上げた。
いきなりだったので驚いた僕は、後ろへのけ反る様にして言った。
「えっ?何?どうしたの?」
すると祖父は大声で言った。
「先生!宿題忘れました」

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