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最終更新日:2024年04月26日
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第102話 「真夜中の訪問者2」

おばさんのお化けが出たと下宿中が大騒ぎになった。その日、食堂にいた数名が僕と一緒におばさんのお化けを目撃したからだった。
「なんでお前の実家の近所のおばさんがお化けになって出て来たんだ?」
「知るかよ、そんなこと」
「俺さ、お化けって見たことないんだ。今晩お前の部屋に泊まっても良いか?」
おばさんのお化けが出た時、そこに居なかった友達が言った。僕にとっては渡りに船といったところで、何ともあり難い言葉だった。
「仕方ないな。今晩だけだぞ」と心にも無い事を言って承諾した。
その他の下宿の住人は、一番広い八畳の部屋の持ち主の所で雑魚寝した。男十人が、一つの部屋で寝る姿を想像すると、お化けよりもずっとおぞましく思えた。その日、僕が寝就いて間もなくだった。
昨日の友達と同じ様に、僕が寝ている足元のドアからおばさんが入って来た。昨日は夢の中の出来事の様に感じたが、今日は違う。体が全く動かず、友達を起こそうとしたが、声が出ない。おばさんは僕が寝ているベッドと友達が寝ている布団の間をゆっくりと歩き、僕の顔の横に立った。
「ありがとうね。あんた子どもの頃から優しかったもんね。おばさん嬉しかったよ。ありがとうね」そう言うとおばさんの体全体が段々と透けて行き、最後には消えてしまった。何故おばさんが礼を言ったのか、その時は分らなかったが、後になって考えると、少し思い当たる事があった。
次の日、僕は地元に住む友達に電話をし、死んだ友達のお墓の隣りはどこのお墓か調べてもらった。すると、そのお墓は、おばさんのお墓だという事が分った。
友達が死んで初めての墓参りの時だった。隣りにあったお墓が、カラスの糞だらけで、草も伸び放題になっていて余りにも酷い状態だったので、余計な事だとは思ったが、僕が掃除をしたのだった。おばさんもよほど嬉しくてお礼がしたかったんだろう。今度行く時は友達の分と一緒に何かお供えを持って行こうと思う。

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