懸賞応募の読者意見は、全投稿内容をプリントして社員全員に毎週回覧している。
その内容は様々で、貴重な案件や質問、激励、クレーム、仕事の事、最近あった出来事や、中には人生相談まである。毎週欠かさず投稿してくる常連の人もいて、社員それぞれにお気に入りの読者が居る様だ。
「苫小牧の○○さん。最近投稿して来ませんね。飼ってた犬が死んじゃって、かなりショックを受けてた様ですけど大丈夫ですかね」と心配する女子社員。
「○○さんは病気が良くなったんすね。早く仕事が見つかると良いな」と社員Ａ。
「○○さんはお仕事が見つかったのですね。お礼まで書いてあります。こういう文章を読むと心が和みますね。本当に良かった」とＢ。
「この人、発効日をずらせとか、他の欄はいらないから求人だけ載せろとか、毎回批判ばっかだな」とＣ。
「そうですね。一生懸命仕事をしてるのに何だか悲しくなっちゃいますよね。この人は当選してるんでしょうか？」と女子社員が懸賞の担当者に聞くと、一度当選しているとの事だった。
「もっと良い人沢山いるのに皮肉なもんっすね」とＡ。
「この方は、よく求人君の事を見てると思いますよ。一見、ただのへそ曲りに見えますが、的をえてる事もたまにありますから。こう言う意見も尊重すべきではないでしょうか」とＢ。
「当選した次の週の投稿はどんな事書いてあったんすかね」とＡ。
早速、過去の投稿を調べてみると、商品券を発送した封筒にまでクレームが書いてあった。
「封筒にまで文句っすもんね。何様だ！」と怒るＡ。
「読者様です。人にはそれぞれ考えがあるのです。自分の考えと違うからと言って決してその人を悪く言ってはいけません」とＢ。
「なんか悟りを開いた坊さん見たいっすね」とＡ。
「スキンヘッドにしたからって、人格まで変わる訳ないだろ。でっかい円形脱毛症を隠す為に丸刈りにしただけなんだから。
なあ、マルガリータ」と言ってＣはツルピカのＢの頭をなでた。