社員Ａが僕に言って来た。
「やっぱ、社員ＡＢＣっていうのやめませんか？」
「また、この前の実名で載せてくれっていう話しか？」
「そうっす。やっぱ折角面白いのに僕だって事が読み手に分からないのがちょっと悔しいと言うか、何と言うか・・・」
「だから前にも言ったろ。恥かく事もあるからＡＢで良いって事になったんだろ」
「でも前の時に比べると、Ｃさんまで入って来たし、結構読みにくかったりしませんかね」
「じゃ仮名を使えば良いだろ。俺は北条ってのが良いな」Ｃが言った。
「じゃ俺は東郷が良いですね」とＢが言った。
「僕は神崎が良いです」
「なに、ちゃんと自分達の名前を考えてたんだ」と僕。
「そうっす。昨日三人で飲みに行った時に考えたっす。仮名にして貰うのに、何て名前にして貰おうかって」Ａが笑いながら言った。
「ＡＢＣが神埼、東郷、北条か・・・・。却下！」
「え～っ！」三人が一斉に声を発した。
「もっとポピュラーな名前が良いな」僕が言った。
「例えば？」とＣ
「鈴木、斉藤、佐藤とか」
「じゃ僕は、野々村ってどうすか？」とＡ。
「却下！」
「え？充分ポピュラーじゃないっすか」
「ただでさえ枠が足りないんだから、三文字はダメ！」
「普通より一文字多いだけっすよ」と口を尖らすＡ。
「一つの話しに野々村が五回出てきたら、五文字分損するだろ。結構貴重なんだよ五文字って、だから名前は短くＡＢＣってしてる訳」
「そうなんすか・・・」
「じゃ、俺が名前を付けてやるよ。Ａが山本、Ｂが羽賀、Ｃが加藤でどうだ？」常務が側に来て言った。
「年齢も二十代、三十代、四十代でバランスもちょうど取れてるし、なんか良いな」Ｃが言った。
「名前の根拠ってなんすかね」とＡが常務に聞いた。
「上の一文字を取ったら山羽加だろ？分からんか？」
「やまはねか？？？」とＢ。
「ふふふ・・『さんばか』って読むんだよ」