友達のＡから相談があると言われ、会社近くの居酒屋で会う事になった。
「家の奴、浮気してるかも知れないんだ」予想以上に深刻な相談だった。
「まさか～っ。あの奥さんに限って絶対にそんな事ないって」僕は友達の言う事を一蹴した。
「だって最近変なんだ。俺って昔しから夜が苦手なのお前も知ってるよな」
「夜１０時には電池切れちゃうもんな、お前」
「俺の弱みにつけ込んでの浮気なんだよ」
「浮気、浮気って何か思い当たる事でもあるのか？」
「昨日って遅くに雨って降ったか？」
「うん、降った」
「今朝、俺が出勤する時、あいつの靴が濡れてたんだ」
「そりゃ外に出たからだろ。ここの丸天って自家製で美味いんだぞ」僕は丸天を食べながら言った。
「そんな遅くに何処行ったと思う？」
「コンビニに買い物でも行ったんじゃないか？お前そんな事で疑ってるのか？」店員に空のジョッキを差し出しながら僕が言った。
「この前も今度の休みがどうのって、男と電話でしゃべってたし、何か最近よそよそしいんだよな。絶対に何か隠してると思うんだ」
「じゃ、奥さんに聞いてみたらいいじゃん」店員が運んで来た二杯目のビールを飲みながら僕が言った。
「いや～っ、美味いな仕事の後のビールはさ」
「聞いてみて、もし浮気してたら・・・」
「だから、そんな事絶対ないって、それに、お前の寝ている夜中に出掛けているんだとしたら、とっくに気付きそうなもんだけどな」
「俺さ、寝たら起きないの知ってるだろ。一度寝たら朝までぐっすりだもん」
「そうそう、お前さ、修学旅行の時、朝出発したバスに乗ってなくてさ、俺が気付いて、ホテルに戻ったら、布団に埋もれる様にして寝てたもんな。今だに変わらずってやつか？」
「お前さ、さっきから丸天がどうの、ビールが美味いだの、飲んだり食ったりばっかで、俺の話しをちゃんと聞いてないだろ」

つづく