「そこ違うな。右がもう少し上だ。あっ！ダメダメ今度は上がり過ぎた」
「え～っ、それじゃ、こんなもんすか？」
カレンダーの両端を持った山本が言った。
「よし、そんなもんだな。前から曲がってるのが気になってたんだ」
「羽賀さんって結構神経質なんすね。僕は全く気にしてませんでしたけど」
「ほら、俺って曲がった事が嫌いだからさ」
「えっ？何か言いました？」
「俺は真面目だから、曲がった事が嫌いなんだよ」
「さてと、仕事の続きをしましょっと」
「だから何で無視なんだよ。あっ、時計も曲がってるぞ」
「そうっすか？」
「うん、曲がってる」
「ちょっと左にずれてる」
「どう見ても真っ直ぐっすけどね」
「ほら１２と６を対角線上に見て行くと、６が若干左にずれてるのが分からんか？」
「あっ、そう言われて見るとそうかも知れないっすね」
「台がいるな。ちょっと待ってろ、今持って・・・」
「いらないっすよ」と言って山本は少し背伸びをしただけで時計に手が届いた。
「ふん、何だか面白く無いな」と不機嫌な羽賀。
「これでどうっすか？」
「よし、良いだろう」
二人の様子を見ていた加藤がやって来て羽賀に言った。
「お前って神経質なのか？」
「そうでもないですけど。だけど曲がってたら何か気持ち悪くないですか？」
「でも、良く見てやっと分かる様な程度だぞ」
「羽賀さんって几帳面なんっすよ。机の上とかも何時も綺麗にしてますし」山本が言った。
「でも、俺としては何か矛盾を感じてしまうな」
「どう言う事ですか？」
山本が不思議そうに聞いた。
「普通、几帳面だったらもっと何とかするだろ？それも毎日だ」
その時、山本が羽賀を見て何かに気付いた様に、はっとした顔をした。
加藤は山本に言った。
「頭が、静香になってるぞ」
「しずかって何ですか？」
「亀井静香だよ」
「亀井静香？」
「寝癖を何とかしろっての」