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最終更新日:2024年04月26日
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第198話 「佐藤さん」

連絡があったのは、ちょうど一週間前だった。珍しく公衆電話からだった。
「横浜の佐藤ですが、覚えていらっしゃいますか?」
五十歳過ぎぐらいの男性からだった。横浜には何人か知人は居るが、佐藤さんの様な年配の人は覚えがない。
「ほら、以前沖縄の民宿でよくお会いしてましたよね」
よく聞くと少し聞き覚えのある声だった。
「あ!あの佐藤さんですね」
「そうです。あの佐藤です」
以前、沖縄の西表島に毎年一回遊びに行くのが僕の恒例行事だったことがあり、毎年決まった宿に泊まっていて、偶然にもその時によく会う人だった。お陰で今では日本全国にそういった友達が大勢居る。佐藤さんもその一人だった。
「今ですね。釧路に来てるんですが、お会いできないでしょうか?」
「えっ?今からですか?」
「いえいえ、都合の良い日をお知らせ願えれば、その日に合わせてそちらに行こうと思うんですが」
かなり日程に余裕がある様だった。
聞くと、定年退職をし、一ヶ月かけて北海道を車で周っているとの事だった。
数日後、大雨の中、予定より二時間程早く佐藤さんが到着した。玄関を開けると、僕が思っている佐藤さんとは別の佐藤さんが立っていた。
僕が困惑しているのにも気付かない様で、佐藤さんは嬉しそうに言った。
「いや~お久し振りですね」
「あ、ああ本当ですね。まあどうぞ」と言いながらも、僕は沖縄での想い出の中を名前と顔を必死に検索する。
「私、痩せたでしょ?」
「うん?痩せた?」
何か手掛かりを掴めるかと思い、少ない情報の一つに僕は飛びついた。
「去年の夏に病気をしましてね。三ヶ月程入院してたんですよ」
佐藤さんの顔に肉を付けるとどうなるか想像すると・・・。
「あ!チョウチョや花の写真を写してた人だ」
やっと思い出すことができ、嬉しさのあまり大声を出してしまった。だが、そんな僕の気持ちをあっさりと打ち消す様に佐藤さんは言った。
「あっ、それ斉藤さん」
じゃ誰?・・この人・・・。

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