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最終更新日:2024年04月26日
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第224話 「グッチ」

加藤が会社から帰宅すると、子ども達が来て言った。
「グッチが脱走したの」
「脱走?居ないのか?」
「うん」
「ちゃんと探したか?」
「椅子の下とか、ベッドの下とか、家中探したけど見つからないんだ」
「お前達、ちゃんと面倒見てたのか?餌、ちゃんとやらないから、家出しちゃったんじゃないのか?」
「そんな事ないもん!ちゃんと餌だってやってたもん」
「じゃ、腹減ったらその内出てくるんじゃないか?」
「グッチ、今頃お腹減らしてるだろうな。可愛そう」
一番下の女の子が目に涙を浮かべながら言った。
「自業自得じゃん。ちゃんと面倒見てたのに、脱走なんかしてさ」次男が言った。
「じゃ、お前ならどうだ?ご飯や洗濯はちゃんとして貰えるけど、家から一歩も外に出ちゃダメって言われたらどうする?そんな生活に耐えられるか?」長男が言った。
「嫌だ、そんなの」
「だろう?グッチも一緒だよきっと。家の中を一通り探検したら出て来るよ」
「さすがお兄ちゃん。良い事言うね」と加藤は長男の頭を撫でると言った。
「腹が減ったらその内出て来るから心配するな」
「でも、グッチを買った時はさ、小さくて可愛かったけど、最近は眼つきも悪くなって、凶暴になったよね」長男が言った。
「ペットは飼い主に似るって言うしな。お前に似て来たんじゃないか?手に負えなくなったら、鍋にして食っちゃおう」長男を見ながら加藤が冗談を言った。風呂上りに缶ビールを一本飲んで、床に就くと、加藤は直ぐに深い眠りへと落ちて行った。
悲劇はその日の深夜に起こった。
「ギヤ~!」
静まり返った家中に響き渡るほどの絶叫を突然加藤が発した。
何事かと驚き、家族全員が加藤の元へと集まった。布団をめくると、加藤の右足の小指にミドリガメのグッチがガッチリと噛み付いていた。
「さっきの鍋にするって話、聞いてたんだね」
眠たそうに目を擦りながら、次男が言った。

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