居酒屋をしている友達Ａから案内状が届いた。
（この度、居酒屋○○を閉店することとなりました。長い間支えて頂いたお客様に感謝の意を表しまして、ささやかではありますが、おもてなしをしたく思い、下記日時におきまして、さよならセールを開催することとなりました。・・・・）
以前から売上が伸び悩んでるという話しは聞いていたが、店じまいする程にまで経営が悪化しているとは思わなかった。それにしても、居酒屋で閉店セールというのも何だかおかしい様にも思ったが、今迄の労をねぎらうつもりで、僕は友達のＢと一緒に、さよならセールなるものに行く事にした。
当日、店内は今迄に見た事もない程の混雑ぶりで、大盛況と言った感じだった。
「凄いな」僕が言った。
「皮肉なもんだよな。今迄も色々考えてやって来たつもりだけど、最後の最後にこんな事になるなんてさ」店主であるＡが言った。
その後、混雑している事もあって、僕とＢは小一時間程で店を後にした。
次の日、友達のＣから電話が来た。
「今度の金曜の夜って空いてる？」
「空いてるけど、何？」
「Ａの店が閉店するらしいんだ。それで、さよならセールをするんだってさ。何か居酒屋で閉店セールってのもピンと来ないけどな」
馴染み客が多いんで、日にちを分けてやってる様だ。
次の週、Ｄから電話が来た。さよならセールの事だった。その後もＡの店のさよならセールは一ヶ月以上も続くロングランとなった。
「さよならさよならって、いつになったらさよならするんだろうな。毎週週末は大繁盛してる見たいだぞ。ずっとさよならセールを続けたりして。俺達の中じゃしたたかさに於いては群を抜いてるからな」何日振りかに会ったＢが言った。
それから間もなくしての事、Ａの店は閉店した。
約一ヵ月後、またＡから案内状が僕の元へ届いた。
（この度、居酒屋△△を開店することと・・・・・・下記日時におきまして、こんにちはセールを・・・・）