ゴールデンウィークが明けた最初の日。山本と女子社員に加藤が言った。
「函館まで行ったんだって」
「そうなんすよ。羽賀さんも来てましたよ」
「よく運転して行くよな。考えただけで疲れちまう」
「加藤さんは何をしてたんすか？」
「家族全員で旭川に行って来たよ」
「旭山動物園っすか？」
「凄かった、混んでてさ」
「私も何年か前に行ったけど、車が渋滞して全然進まないんで、諦めて引き返して来た事がありましたよ」と女子社員が言った。
「子ども達は喜んでたけど、俺と親父は、ほとんどベンチに座ってたな」
「お父さんも行ったんすね」
「一回見て見たいって言ってたから、連れて行ったんだけど、ほとんど俺と一緒に座ってたよ。あそこの動物園って山の中腹にあるから歩くの結構大変なんだよ」
その時、羽賀が営業先から戻って来た。
「羽賀さんは函館の後は何処か行ったんですか？」女子社員が言った。
「あの後は、せっかく函館迄来たんだから、北海道を出ようかって事になって青森に行ったんだ」
「青森？車でか？」と加藤。
「フェリーで青森迄行きましたよ。その日は青森で一泊して、次に日に北海道に戻って稚内迄行って、旭川と富良野に寄って帰って来ました」
「凄いね、尊敬しちゃうね。その行動力。青森から稚内って尋常じゃないよ」と加藤。
「本当ですね。函館だって遠いのに」と女子社員。
「めちゃくちゃ疲れたよ」
「そりゃそうでしょう。そんだけ運転すれば」と山本。
「俺も歳なのかな？まだ疲れが取れないんだよ。こう、何て言うか体全体が重いって言うかさ、肩から腰に掛けてズッシリと重たい感じがするんだ」
「もう若くないって事さ。あんまり無理すんなよ」と気遣う加藤。
「はい、それにしてもこんなの初めてですよ。体が重いと言うか・・・」
「青森の何処に行って来たんすか？」と山本。
「恐山に行って来た」