求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年04月26日
最終更新日:2024年04月26日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第304話 「律子さん10」

第304話 「律子さん10」

昼休みに会議室でテレビを見ながら女子社員数人でお弁当を食べていると、向かいの席にどっかと腰を下ろした小林幸子がお弁当の包みを広げながら言った。
「来週の金曜日に律子さんの歓迎会をしようと思うんですけど、空いてますか?」
うちの会社は芸能人と同姓同名の人が二人居る。小林幸子に田中好子。私は一呼吸おいてから笑顔で答えた。
「大丈夫、空いてますよ」
やはりどこから見ても小林幸子より小林亜星にそっくりだ。毎回顔を見るたびに吹き出しそうになるが、そんな失礼な事をする訳にはいかない。こちらから話す時は、自分なりに笑わない様に心の準備をしてから話掛ける。悲しい事を考えながら話すのだ。もし笑ったら主人が死ぬと考えると、笑い顔を消す事が出来る。今日の様に、向こうから急に話をして来た場合は、心の準備が出来てないものだから困ってしまう。特別私は笑い上戸ではないのだが、ツボに入ってしまうと止まらなくなってしまう。人との会話でもテレビを見ている時でも、他の人が何とも思わない言動やしぐさでも、私のツボに入ったら最後、笑いが止まらなくなるのだ。普段の生活をしている時であれば問題無いのだが、笑いというのは、時と場所を選ぶ。それがもし、お葬式であれば不謹慎極まりない。最近少しずつではあるが小林幸子に対して免疫が出来つつある様に思う。もう少しで普通に話しができそう。
歓迎会当日の出来事だった。生ビールなんて久し振りに飲んだ。こんなに美味しかったっけ?早くも私が六杯目のビールを口に含んだ時だった。
「強いんですね」
正座している私の背中越しから逆さ絵の様な状態で、真っ赤な顔をした小林幸子が覗き込んで来た。逆さになった顔は私の数センチ手前。手で押さえる間もなく私の口から激しい勢いでビールが小林幸子の顔面に吹き掛かる。
「あっ、ご免なさい。でもどうしょう主人が・・主人が死んじゃう・・ふっふふへへ・・ハッハハハ」
私の体にできつつあった免疫は、この日を境に消滅した。

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態