求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年04月26日
最終更新日:2024年04月26日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第327話 「冬囲い②」

第327話 「冬囲い②」

 祖父は脚立の上でニヤニヤ笑っている。
「びっくりしたか?お前、なかなか反射神経良いんでないか」と言って笑う祖父。
「騙したのか?爺ちゃん」
「お前が年寄りにどれ位気を使ってるのかと思ってな。それと、さっきの仇だ」
「仇って雪囲いの?」
「そうだ」と言って笑う祖父。脚立に登らせるのは少し危険なので、高いところのは僕が外す事にした。
「よし、これで全部終わったな。家の庭は、夏より冬の方が格好良いんだ」
「どう見たって夏の方が綺麗だろう」
「いやいや、冬が格好良いんだって」
「なんでだよ」
「冬格好良いって言うべ」
「ああ、冬囲いね」
「そうだ、やっと分ったか」
「じじいギャグだな」
「今日は外して良かったよ。木も暑い暑いって言ってたからな」
冬囲いを外したばかりの木を下から見上げながら祖父が言った。
「へ〜っ!爺ちゃん木の言う事が分るのか?」
「そりゃそうだよ、お前よりこいつとの付き合いの方がずっと長いんだから」
確かにこの木は僕が生まれる前からここにあった。と言うか、あった様な気がする。でも何ていう木だろ?
「お前、ここに木があるの知ってたか?」
「そ、そりゃ知ってたよ」
「本当か?今初めてこの木に気づいた様なそぶりだったぞ」結構鋭い処を突いて来るなと思った。
「気に掛け無いから見もしない。見もしないから存在すら気付かない。さっき俺が脚立の上でぐらついた時、お前はベランダから飛び出して俺の体を支えてくれたろ。それはお前が俺を気に掛けていてくれたから、ちょっとした変化にも気付く事が出来たんだ。こいつも我が家の大切な一員だ。もっと気に掛けてやってくれんかな。俺が死んだらお前がこの木の面倒を見てくれ」
「うん、分ったよ。で、この木は何の木なの?」
すると祖父は僕から目線を外し、くるりと背を向け、脚立をしまいながら言った。
「この木何の木?気になる木だ」

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態