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最終更新日:2024年04月26日
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第393話「微妙な二人」

分厚い老眼鏡をかけて旅行のガイドブックを見ている祖父に僕が言った。
「どっか行くの?」
「うん?何でだ?」
「そんな本読んでるからさ」祖父は、ガイドブックを閉じると表紙を見て言った。
「ああ石川県か」
「行くの?石川県」
「まさか、行かんよ」
「じゃ、何でそんな本読んでるの?」
「これを見るとな、行った様な気分になるんだよ。先週はな、ペルーに行って来たぞ。マピチュチュって有名な遺跡があるだろ」
「うん、マチュピチュね」
「そう、マピチュチュだ。天空の城って呼ばれてる」
「それって何だか寂しくないか?国外は無理でも国内なら行けるんじゃないの?」
僕は祖父が持っているガイドブックを指差して言った。
「この歳じゃな、何かあったら皆に迷惑掛けちまうし」
「そんな事言ってたら、何処も行けないだろ、身体の自由が利く内に行きたいとこ行った方が良いと思うけどな。隣りのじいちゃんなんかどう?一緒に」
「ありゃ駄目だ。あんなドケチが旅行に金なんか使うわけない」と言っていると偶然にも隣りのじいちゃんがやって来た。
「お前、石川県に行くか?」といきなり誘う祖父。
「石川県ったら、加賀だな」と隣りのじいちゃん。
「そうだ、加賀百万石ったら前田利家だ」と祖父。
「だけど、前田利家と言やあ加賀百万石だな。あっそうだ、前田さんの婆さんが入院したらしいな」と隣りのじいちゃん。
「ああこの前、救急車が来てたもんな。昔はあの婆さん綺麗だったよな」と祖父。
「いやいや、家の婆さんの方が綺麗だった」と隣りのじいちゃん。
「ふん!何が綺麗なもんか、あんな海坊主みたいな女。で、どうなんだ。加賀に行くのか行かんのか?」
「加賀と言えば前田利家」
「お前、ボケたか?同じ事繰り返しやがって」と祖父。
「そっちこそボケてないかチェックしてやったんだ」とは言っているが、結構微妙な会話があることに二人は気がついていない。

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