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最終更新日:2024年04月26日
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第408話「大雪の夜に」

今年初の大雪が降った。
仕事を終え、自宅へ帰ると、いつも真っ先に雪かきをする祖父は留守なのか、除雪車が通り過ぎた後の硬い雪の塊が、積って間もない雪の上に連なり、腰ほどもある壁となってカーポートと玄関先を塞いでいた。
僕は車一台入れる分だけの除雪をし、取りあえずカーポートに車を突っ込んだ。
家の中は真っ暗だった。祖父はどうしたんだろう?
高齢ゆえ一抹の不安を抱きながら祖父を呼んだが、返事はない。
やがて、祖父の部屋の方から聞き馴れない音楽と共に妙なセリフの様なものが聞えて来た。祖父の声だ。良かった生きてた。
「古い奴だとお思いでしょうが、古い奴ほど新しい物を欲しがるものでございます。♪何から何まで真っ暗闇よ~筋の通らぬことば~か~り~右を向いても・・」
気持良さそうに歌う祖父の声が聞こえて来た。カラオケか?こんな日に何で?
僕が祖父の部屋の戸を開けると、左手を耳に当てながら熱唱する祖父の姿が目に入った。どうやら誰かの真似をして歌っている様だ。
「これ、まだあったんだね」それは、僕が子供の頃に祖父が買ったカラオケセットで、今だに健在だという事に驚いた。
ボリュームを絞ると祖父が言った。
「捨てようと思って出したんだけど、まだまだ使えそうだな。お前も歌わんか?」
「えっ?何があったっけ?」そしてテープを入れる。
「♪なご~り~雪も~・・」僕が歌ってる途中で部屋の戸が開いて父が入って来た。
「お前ら、歌なんか・・あれ?懐かしいなおい」
「親父、あれ歌え、何だっけ?昔よく歌ってたやつ」祖父がテープを差し替えると曲が流れだし、ついに僕等三人は酒盛りを始めた。
「♪椿咲く~は~る~なのに~貴方は~帰らない~」久し振りに父の歌を聞いた。
暫くしてまた部屋の戸が開くのと同時に、仕事から帰った母の怒鳴り声が部屋中に炸裂した。
「あんた達!何を考えてるの!さっさと雪かきしなさい!」僕等三人は部屋を飛び出した。
そう、今日は大雪だった。

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