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最終更新日:2024年04月26日
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第411話「我が家のお宝1」

ある日の晩、僕が部屋で本を読んでいると祖父が入って来て言った。
「これどうだ?」手には汚らしいどんぶり見たいな焼き物を手にしている。
「何それ?」
「古備前の茶碗だ。この高台なんか良いだろ?豪快で」茶碗をひっくり返すと、底の部分を親指の腹で擦る様にして祖父は言った。
祖父に骨董の趣味なんかあっただろうか?僕がどうしたのか聞くと、祖父は良く聞いてくれたと言わんばかりに鼻の穴を大きく膨らませて得意気に話し出した。
「昔、俺の親父が借金の形に貰った茶碗だ」
「それって、なんでも鑑定団でよくやってるパターンじゃん」僕は笑いながら言った。祖父が言った高台がどうのというのも、何か聞いた事のある言い回しだと思ったら、これもテレビ番組の影響の様だった。
祖父は毎週欠かさず、なんでも鑑定団を見ている。僕は祖父がまたふざけた事を言っていると思い、相手にもせず、読書の続きを始めた。
僕の態度を見た祖父は、階段の上から大声で居間にいる父を呼びつけると、茶碗を見せて言った。
「これ、憶えてるか?」
父の顔色が一瞬変わったのを僕は見逃さなかった。
「おお、それは爺さんが借金の型に貰った、古備前じゃないか。懐かしいな」それを聞くと祖父は満足そうな顔をして言った。
「そうだ。お前も憶えてたか。これは我が家の家宝だから、俺が死んだらお前ら親子がちゃんと引き継いで行かなくちゃだめだぞ」僕にはどう見ても、汚いどんぶりにしか見えない。
「それっていくらぐらいするの?」僕が言った。
「そうだな~。当時、親父が貸した金が百万って言ってたからな。今じゃ三百万か五百万以上はするんでないか?」とかなりいい加減な祖父。
「ちゃんと鑑定してもらった方が良いんじゃない?」
「そうだな。本当の価値を知っとかなきゃな。もしかしたら一千万もするかも知れんしな」どうやら祖父の頭の中に偽物という文字は存在しない様だ。 つづく

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