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最終更新日:2024年04月26日
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第422話「大切な物2」

祖父の誕生日プレゼントを買った帰り道、車の中で祖父が昼食を何処かで食べようと言ったので、近くのファミレスに寄る事にした。
「それ持って降りるの?」
「車に積んでおいて盗まれたら大変だろう」盆栽の入った手提げ袋を見ながら祖父は言った。
「大丈夫だって、そんなもんだれも盗らないから」
「いやいや、大切な物だし、用心に越した事はない」真剣な顔で話す祖父の顔を見て、僕は笑いながら店のドアを開けた。
昼食には少し早いのか、店内の客はまばらだった。僕等は四人用の席についた。
祖父は余程嬉しかったのか、まるでおもちゃを買って貰った子供が、家まで待ちきれずに袋を開けてしまう様に、紙袋をテーブルの隅に敷くと、盆栽をその上に乗せた。
窓辺に近い僕等の席には、強く入り込んだ太陽の光が黒松の細い葉を照らし、銀色に輝かせていた。
「見てみろ、綺麗だろ。気品すら感じる。俺の命の次に大切な物だな。これは」いつの間にか盆栽は、大切な物から命の次に大切な物へと格上げされていた。
とにかく祖父は嬉しくて仕方ない様だった。
「俺が居なくなったらお前が面倒見てくれよ」
「えっ?どういう事?」
「俺よりもこの黒松の方がずっと長生きするからよ」あっと思った。何も考えていなかったが、確かにその通りだ。祖父より松の方が長生きするのだ。
もしかすると、僕よりも長生きするかも知れない。その時、こういう物を気軽に買ってはいけない様に思った。松といえども生き物なのだ。
食事を済ませて家に戻ると、ちょうど父が外に居た。
「すまなかったな。金使わせちゃって」祖父が照れくさそうに言った。
「どれ、気に入ったのがあったか?」と言って父が祖父の傍に寄って来た。
「すごく良いのがあった」とまで祖父は言った後、あっ!と大声を出すと、慌てて僕の車の助手席に乗り込み、シートベルトをしてから、更に大声で言った。
「大変だ!急げ!さっきのレストランに戻るぞ」

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