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最終更新日:2024年04月26日
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第426話「探し物」

祖父が悲しそうに言った。
「とひは取りたくなひな」入歯を外しているので、かなり聞き取りにくい。
「どうしたの急に」
「最近、物わふれがひどくてな、自分でもほとほと嫌になってきた」
「でも、爺ちゃんだけじゃないよ。親父や俺だって物忘れぐらいするよ。ほら、この前だって、親父の財布がなくなって大騒ぎして皆で探したろ。いくら探しても見つからないから、どっか外で落としたんじゃないかって言ってたら、ポケットに入ってたっていう漫画見たいなオチ」
「ああ、あれふぁ笑いひを通り越ひて呆れひゃったな。あんたけ大騒ぎひといて、とんたけ大金が入ってるのかと思ったら、ひっこい小銭入れだったしな」
「だから、そんなに気にすることないって、親父の方が爺ちゃんより重症かもよ。それよりさ、何で入歯外してんの?」
「あっ!ひょうだ!俺のひれば、とこいったべ」祖父は家中何処を探しても見つからないと言った。
「家の中しかないだろう。よそで外す分けないんだし」ここから二人で入歯の大捜索が始まった。
「何か探し物か?」父がやって来て言った。
「ひれ歯がない」
「何だよヒレバって」僕は父に入歯がないと通訳した。
「それって、無くす様なもんか?」
「無くなったんらから、ひょうがないべ」と捨て台詞を吐く祖父。
「まさか誰かみたいにポケットから出てきたりしないよな」と僕が言うと祖父は大げさに笑いながら言った。
「ひょこまでボケてない」
父は祖父の方を見ると、フンと鼻を鳴らした。
その時、隣りの爺ちゃんがやって来た。僕等の様子を見て察すると、手に持ったビニール袋を掲げて言った。
「これ探してるのか?」そこにはピンク色の歯茎が付いた入歯が一つ入っていた。
「何で、よその家で入歯なんて外すんだよ」と父。
「何かあったんだなきっと」祖父が他人事の様に言った。
「うん、何だったか覚えてねえな」と隣りの爺ちゃん。

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