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最終更新日:2024年04月26日
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第45話 「柱時計」

会社の三階にある会議室に、古い柱時計があった。
四十年以上も昔、この社屋を新築した際に、何処かの会社から贈られた物だった。
「ボーンボーン」と一時間ごとに鳴る鐘の音は、夏場など窓を開けておくと、一階にいてもハッキリと聞き取れる大きさで、忙しい仕 事中でも、この音を聞くと何となく心が休まると言うか、穏やかな気持ちになる事ができた。
この時計のネジを毎朝巻いてた常務が半年前に亡くなった。今はもう誰もネジを巻く人がいなくなった柱時計は、時を刻む事を忘れた 様にじっと動かない。
僕は、薄っすらと埃の付いた時計の扉を静かに開け、ネジを一巻きすると、振り子を指先で軽く横に振った。すると、今まで止まって いたのが嘘の様に、時計は息を吹き返し、新たに時を刻み始めた。
その日は、まだ春先なのに、初夏を思わせる陽気で、窓を開けると清々しい空気が入って来た。それと同時に社内全員の動きが止まっ た。
「ボーンボーンボーン」
常務の時計が鳴り出した。
「常務だ!」誰かが言った。
何人かの女子社員が恐怖のあまり泣き出した。社内はパニックになった。僕も時計が鳴る事など全く予想していかった。もう今更言う に言えない。
この時の事は今でも語り継がれている。会社を心配して、亡くなった常務がやって来たと。
それを聞く度、僕の心は痛む。

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